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2011 年度 実績報告書

統合失調症の病態におけるD型セリンの分子機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 22390220
研究機関千葉大学

研究代表者

橋本 謙二  千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 教授 (10189483)

キーワード統合失調症 / D型セリン / NMDA受容体 / D型アミノ酸 / D型アミノ酸酸化酵素 / グルタミン酸受容体
研究概要

これまでの多くの研究から、D型アミノ酸の一つであるD型セリンを介するNMDA受容体機能低下が統合失調症の病態に関与していることが示唆されている。脳内のD型セリンはセリンラセマーゼ(SRR)によってL型セリンから合成される事が知られている。今回、SRR遺伝子欠損マウスにおける脳および末梢臓器におけるDセリンなどのアミノ酸濃度(NMDA受容体に関連したアミノ酸)を測定した。SRR遺伝子欠損マウスの前頭前皮質、海馬、線条体におけるDセリン濃度は、野生型マウスと比較して有意に減少した。成熟したマウスの小脳におけるDセリン濃度は、前頭前皮質や海馬と比較して著しく低く、SRR遺伝子欠損マウスと野生型では有意な差は見られなかった。さらに、インビボ脳内透析法を用いてマウス海馬における細胞外D型セリン濃度を測定したところ、D型セリンは、SRR遺伝子欠損マウスでは有意に減少しているが、他のアミノ酸(Lセリン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン)は差が無かった。また各種末梢臓器におけるDセリン濃度は、脳と比較するとかなり低濃度であるが、腎臓、精巣、筋肉においてSRR遺伝子欠損マウスにおいて有意に減少していたが、他の部位では差が無かった。一方、他のアミノ酸(Lセリン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン)濃度は両群で差は認められなかった。
統合失調症と類似した症状を引き起こす覚せい剤(メタンフェタミン)を投与すると両群では急性の行動量には差が認められなかった。興味深いことに、覚せい剤の繰り返し投与(1日1回5日間)、による逆耐性の形成が、野生型とは異なり、SRR遺伝子欠損マウスでは観察されなかった。本研究結果より、脳におけるDセリンは主にSRRによって合成されていることが確認できた。また覚せい剤投与による逆耐性の形成にSRRが関与している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

セリンラセマーセ(SRR)遺伝子欠損マウスを用いた研究結果も出ており、学会発表だけでなく、学術論文として海外誌に掲載している。

今後の研究の推進方策

今後、セリンラセマーセ(SRR)遺伝子欠損マウスを用いて統合失調症の病態におけるD型セリンの分子機構、特に生成・代謝機構について解明していく。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2011 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Magnetic resonance spectroscopy study of the antioxidant defense system in schizophrenia2011

    • 著者名/発表者名
      Matsuzawa D, Hashimoto K
    • 雑誌名

      Antioxidants & Redox Signaling

      巻: 15 ページ: 2057-2065

    • DOI

      10.1089/ars.2010.3453

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Levels of D-serine in the brain and periphery organs of serine racemase (Srr) knock-out mice2011

    • 著者名/発表者名
      Horio M, et al.
    • 雑誌名

      Neurochemistry International

      巻: 59 ページ: 853-859

    • DOI

      10.1016/j.neurint.2011.08.017

    • 査読あり
  • [学会発表] Lack of behavioral sensitization in serine racemase knock-out mice after administration of methamphetamine2011

    • 著者名/発表者名
      Horio M, et al.
    • 学会等名
      The 41th Annual Meeting of Society for Neuroscience
    • 発表場所
      米国ワシントンDC市
    • 年月日
      20111112-20111116
  • [学会発表] セリンラセマーゼ遺伝子欠損マウスでの覚せい剤投与による行動感作の欠如2011

    • 著者名/発表者名
      堀尾菜央、河野眞美、藤田有子、井上蘭、森寿、橋本謙二
    • 学会等名
      第7回D-アミノ酸研究会学術講演会
    • 発表場所
      東京都
    • 年月日
      20110909-10
  • [学会発表] ペンチレンテトラゾール誘発痙攣発作におけるDセリンの機能解析2011

    • 著者名/発表者名
      井上蘭, ら
    • 学会等名
      第7回D-アミノ酸研究会学術講演会
    • 発表場所
      東京都
    • 年月日
      2011-09-10
  • [備考]

    • URL

      http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/shakai/jp/byoutai/index.html

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公開日: 2013-06-26  

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