研究課題
本研究の目的は、自閉症の病態において脳内コリン系の果たす役割を明らかにすることにある。平成22年度において、自閉症者脳内のアセチルコリンエステラーゼ活性を陽電子断層法(PET)により計測したところ、顔認知に重要な紡錘状回において有意に低下していた。さらに、この低下は社会性の障害の重症度と逆相関していた。すなわち、紡錘状回におけるコリン系の障害が強いほど、社会性の障害が強いという相関関係が示唆された。そこで、平成23年度は、自閉症脳内コリン系の障害が同障害における顔認知に果たす役割を調べる目的で、以下の2つの検討を行った。1)顔認知における注視点の分布の解析定型発達児が他者の顔を見るとき、その注視点は主に目に集中するのに対し、自閉症児はほとんど目を見ない。そこで、前年度のアセチルコリンエステラーゼPET研究の被検者を対象に、人物の顔を含む一連の画像をディスプレイ上に提示した時の注視点の分布を計測することにした。平成23年度は、(株)タイカ製の注視点検出装置(本学と静岡大工学部が開発に協力)を用いた予備的検討により、この装置が自閉症児の注視点異常を十分な精度で検出できることを確認した。現在、PET研究の被検者を対象とした検討を進めている。2)顔認知課題負荷によるfMRI検査上記1)の注視点検出装置で用いたのと同様の、人物の顔を含む一連の画像を課題として提示した際に賦活する脳部位を明らかにする目的で、fMRI実験を行うこととした。当初、1.5テスラの磁場強度をもつMRIスキャナによる検討を予定していたが、絋仁病院(名古屋市)の協力が得られ、平成23年度は、同院が有する3テスラ・スキャナ(CE社製Signa EXCITE)を用い、撮像プロトコルの作成と検証を行った。現在、このプロトコルを用い、上述のPET研究の被検者を対象に撮像と解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
『9.研究実績の概要』で述べたように、平成23年度は注視点検出装置の精度検証、および、fMRIに用いる3T MRスキャナの撮像プロトコルの両者に十分な時間をかける必要があったが、いずれも主要な課題はクリアされている。
本研究は、被検者の協力を得られることが最も重要であるため、研究の目的、方法について十分な説明を行うことはもちろん、得られた成果とその意義についても随時、文書等をもとに説明していく。
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