1. 研究目的 統合失調症の発症に対して大きな効果を有するゲノムコピー数変異(CNV)を同定する。またこれらCNVを有する患者の臨床的特徴(身体疾患、発症年齢、等)について詳細に分析する。 2. 研究方法 Comparative Genomic Hybridization (CGH)法を用いて、ゲノムワイドに統合失調症の発症リスクを高めるCNVを探索した。解析には統合失調症患者300名のゲノムサンプルを用いた。 3. 研究結果及び考察 患者300名中、22q11.2の欠失3名、15q11.2の欠失4名、3q29の欠失1名、16p13.11の重複1名を同定した。欧米の大規模なゲノム解析研究により、これらCNVは統合失調症の強い遺伝リスクとして報告されている。各々は1Mbp以上のサイズがあり、中枢神経系に発現するものを含め、多数の遺伝子に強い機能的変化を及ぼすことが予想される。特に22q11.2の欠失は患者群で1%と高率に存在し、先天性心疾患や特異な顔貌などの典型的な表現型を有する者を同定した。上記4種類のCNVは患者群の3%で同定され、またこれらのCNVを有する患者の半分は発症年齢が早い(15歳以下)、あるいは精神遅滞を合併しており、CNVが神経発達障害の側面に関与していることを強く示唆する。本研究は、遺伝学的に異質性の高いと想定される統合失調症がCNVの観点から均質性の高い群に細分化される可能性を示した点で画期的な知見をもたらした。
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