研究課題
1.研究目的統合失調症の発症に関与する稀なゲノムコピー数変異(CNV)のスクリーニングを行い、統合失調症の発症リスクを高めるCNVを同定し、結果の再現性の確認と詳細な構造解析を行う。また同定されたCNVの多面発現性についても検討を加える。2.研究方法Comparative Genomic Hybridization (CGH)法を用いて、統合失調症患者と健常者を解析し、発症リスクとなるCNVを探索した。同定されたCNVはさらに高解像度のCGH法を用いて再現性の確認を行った。3.研究結果および考察患者群の解析から、既に報告のある大規模CNVとして染色体領域1q21.1欠失2名、2p16.3欠失1名、3q29欠失1名、22q11.21欠失5名、16p13.11重複2名、16p11.2重複2名を同定した。健常者では16p11.2重複が1名に同定されたのみで、患者群で有意に頻度が高い結果であった。また神経発達に関連する遺伝子(ADAM22、NLGN4X、GRM8.CHRNA7、ASTN2、RBFOX1)のエキソン領域と重なる稀なCNVを患者群のみで同定し、さらに高解像度のCGH法で再現性を確認した。CNVの多面発現性に関しては、同定された全ての大規模CNVが広汎性発達障害や知的障害の発症にも関与すると報告されている。3q29欠失と16p11.2重複は双極性障害患者でde novo CNVとして同定された。CHRNA7の重複は患者群のみで同定されたが、注意欠陥多動性障害との関連が最近報告された。以上から、統合失調症とそれ以外の精神疾患(知的障害・広汎性発達障害・ADHD・双極性障害)に共通の遺伝要因が関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
統合失調症のCNV解析を行い、既報の大規模CNVや神経発達関連遺伝子のCNVを多数同定した。この中には遺伝子機能に強い影響を与えるものが数多く含まれており、統合失調症のmissing heritabilityの解明に向けて重要な知見をもたらした。加えて、一部についてはCNVの多面発現的効果も確認できたため。
1.CNV解析の結果に基づいて細胞モデル・動物モデルを作成し、統合失調症の分子病態を明らかにする。2.CNVを有する患者の表現型(精神症状、薬剤反応性、脳画像、認知機能)を明確化する。3.CNVを有する患者の家族のゲノムを解析し、de novo変異の確認やCNVの表現型スペクトラムを検討する。
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