研究課題
統合失調症は家族集積性が高く、遺伝要因と環境要因の両方によって発症すると考えられている。遺伝要因は、統合失調症の発症リスクに小さな影響をもたらす多数の遺伝子によると考えられており決定的な遺伝子は未だ見つかっていない。そこで統合失調症のリスク遺伝子は、その発症リスクを直接的に高めるのではなく、統合失調症にて認められる特徴的な神経生物学的な障害である中間表現型を規定し、その結果、統合失調症の発症リスクを高めるという新しい概念が提唱された。中間表現型は、遺伝性があり量的に測定可能で長期にわたり安定した形質で、認知機能、脳画像、神経生理学的所見などが知られている。応募者は、この中間表現型を用いて統合失調症のリスク遺伝子を見出し、創薬の基盤となる病態を解明することを目的とする。本年度は、いくつかの遺伝子と中間表現型との関連を検討し、関連のある遺伝子を見出した。その上に、統合失調症の中間表現型として知られている高次認知機能(言語性記憶、視覚性記憶、作業記憶、遂行機能、注意・集中力、語流暢性、表情認知機能、知能)、性格傾向(TCI : Temparament and Character Inventory、自閉症スペクトラム指数、分裂病型人格障害評価尺度)、脳画像(3次元脳構造画像、拡散テンソル画像、機能的MRI:fMRI)、神経生理学的所見(プレパルス抑制、馴化、近赤外分光法にて測定する前頭葉課題の前頭葉血流の変化、脳波)をすでに測定した統合失調症患者170名と健常者287名のゲノムDNAサンプルを用いてマイクロアレイチップ(GeneChip Genome-Wide Human SNP array 6.0)にてSNP (single nucleotide polymorphism)やCNV (Copy number variation)のジェノタイピングを行った。統合失調症の認知機能障害に関連する遺伝子に関する予備的な解析においては、ゲノムワイドの有意性であるp<5x10^<-8>の遺伝子は見つからなかったがそれに準ずるp=6x10^<-7>の遺伝子を見出した。
1: 当初の計画以上に進展している
集めたサンプルについて、予定していたジェノタイピングを予定よりも早くすべて終了した。また、予備的な解析を進めており、興味深い結果が出てきているため、当初の計画以上に進展していると考えられる。
今後は、多数ある中間表現型について、全ゲノムにおける解析を行い、どのような遺伝子が関連しているかを同定する。予定以上の達成をしており、特に問題はない。
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