研究概要 |
癌治療に係わる放射線、温熱および超音波の細胞死に関する分子応答機構解明とその増強を目的とする。放射線、温熱(ハイパーサーミア)、および超音波は癌治療に寄与し、装置の開発とともに、臨床利用も広がっている。申請者はこれらにより誘発されるアポトーシスについて、細胞内活性酸素が重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。しかし、その制御機構、特に分子間の相互関係について、体系的に十分解明されたとはいいがたい。これら3因子の作用機構は本質的に異なるが、例えばアポトーシス下流では共通している。相違は上流の細胞内情報伝達にある。本研究では網羅的遺伝子発現ネットワーク解析法により、変動する遺伝子を探索し、比較検討することを目的とする。また、遺伝子発現を制御しているマイクロRNAの発現についても併せて検討を加えた。放射線、温熱、超音波について、同程度のアポトーシスを誘導する照射条件を設定し、3者の比較をおこなった。DDIT3,BIRC3,SOD2が放射線に、HSP40,HSP27が温熱に、また、HMOX1が超音波に特異的に応答し、上向き調節される遺伝子であった。JUNは3者に共通し、ATF3は放射線と温熱に、HSP70,DUSP1は温熱と超音波に、また、PPP1R15Aは超音波と放射線に共通する遺伝子であった。これらにより、異なる特徴を有する治療のための物理的因子の遺伝子応答の相違が明らかとなった。マイクロRNAの発現の検討は、継続中であるが、温熱では比較的有意な変化が認められるが、放射線では少なかった。遺伝発現調節への影響の違いを反映したものと思われ、今後の検討課題である。
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