研究概要 |
これまで、高磁場研究機である4.7T MRIを用いて得られた脳組織水の見かけの横緩和速度R_2^†と、脳内非ヘム鉄濃度[Fe]、および高分子量成分の存在比f_M(=1-水の存在比f_W)の間に見られる相関式、R_2^†=α[Fe]+βf_M+γ(α,β,γは定数)を低磁場臨床機に拡張することを目的として、4.7T MRIの主磁場強度を1.5Tに落とし、男性6名、女性6名の計12名で既開発済みのMASE法を用いたR_2^†測定を行った。この結果、1.5Tでは脳のR_2^†は4.7Tに比較して有意に小さく、緩和に古典的双極子相互作用以外の機構が働いていることを確認した。また、脳内6部位のR_2^†から多重回帰分析により得られた相関式はR_2^†=0.151[Fe]+21.53f_M+6.67であった。4.7Tの結果と比較して、α、γは有意に小さく、βは小さいものの有意差は認められなかった。また、相関係数は0.99と4.7Tとほぼ同じ値を示し、臨床低磁場強度においても4.7Tで得られたのと同様の高い精度で[Fe]とfMによりR_2^†が記述できることがわかった。 また、臨床用MRI装置での同様の測定をめざして、MASE測定シークエンスのSiemens trioシステムへの移植を行った。ファントム実験での動作チェックの結果、良好な測定が行えることを確認したので、臨床用3T機での測定を予定している。 さらに、前述の相関式を用いて測定R_2^†より鉄の脳内マップを作成する方法の開発を行った。このためにはf_Mマップ、すなわちf_Wのマップの実測が求められる。本研究では高磁場でf_W測定を妨害するB_1磁場分布の不均一性を補正し、正確な水分布画像f_Wを求める方法を開発した。
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