研究課題/領域番号 |
22390238
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
三森 文行 独立行政法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 客員研究員 (90125229)
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研究分担者 |
渡邉 英宏 独立行政法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 主任研究員 (60370269)
宮嶋 裕明 浜松医科大学, 医学部, 教授 (90221613)
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キーワード | MRI / 横緩和速度 / 生体鉄 / 磁性 / 神経変性疾患 |
研究概要 |
脳組織の見かけの横緩和速度R_2^+と、脳内非ヘム鉄濃度[Fe]、および高分子量成分の存在比率f_Mの間に見いだした相関式、R_2^+=α[Fe]+βf_M+γ(α,β,γは定数)を用いてヒト脳の非ヘム鉄濃度分布の画像化を実現した。健常者の脳では、基底核部位や後頭葉灰白質で高濃度、内包・視放線部位で低濃度という死後脳の鉄実測値とよく一致する分布が得られた。さらに、鉄の蓄積から神経変性を引き起こすことが知られている無セルロプラスミン血症患者(60歳男性)でも測定を行い、この結果、患者の尾状核や被殻では60mg[Fe]/100g湿重量以上、前頭皮質でもおよそ20mg[Fe]/100g湿重量の高濃度の鉄分布を示すことがわかった。この鉄濃度は患者脳の全域で健常者脳の5倍程度の上昇を示している。この結果は、本疾患の病態の解明、治療経過の把握にきわめて有用であるのみならず、鉄と神経変性が関わるその他の神経変性疾患の理解にも利用可能であると期待される。一方、昨年度にMASE測定法の移植を行った3T、7Tでもミネソタ大学のMRI装置を用いてそれぞれ5人、6人の健常被験者の測定を行った。この解析より、いずれの磁場強度でも、4.7Tでの測定結果と同様にR_2^+=α[Fe]+βf_M+γの相関式が成立することを見いだした。この結果はこれまでに解析を行った1.5Tでの結果を合わせて、1.5~7Tの広い観測磁場範囲で標記の相関式が成立することを示し、脳組織の横緩和機構について有用な手がかりを与えるものである。またこの結果は、1.5~3Tの低磁場臨床装置でも、高磁場機と同様に鉄分布画像を得られる可能性を示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳内鉄分布画像法を構築し、健常被験者と無セルロプラスミン血症患者の違いを定量的に評価できた。また、新たに3T、7Tでのヒト脳横緩和速度の測定を実現し、これよりヒト脳の水プロトン緩和機構の考察を進め得た。
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今後の研究の推進方策 |
開発した脳内鉄分布画像法を応用し、無セルロプラスミン患者や健常者のさらなる脳鉄分布画像を蓄積する。また、MASE測定法を2次元から3次元に拡張し、横緩和速度の3次元画像の取得をめざす。さらに、患者死後脳の固定化組織のMRI測定を行い、横緩和速度と鉄、神経変性の相関について知見を深める。
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