研究概要 |
低レベル量の熱・振動・圧力の複合エネルギー生体組織接合技術の確立として,平成23年度は,22年度につづいて「接合デバイスの改良と動物実験による評価」,「生体組織接合促進技術の開発」を行った。 ・動物実験用デバイスの改良 ブタを用いた動物実験より,ヒータに取り付けた温度センサが1つであったため小径血管組織に温度センサが触れない場合があった.ヒータ接触部に複数の温度センサを配置し,専用の温度センサ判別プログラムを組込むことで小径血管に対応出来た.また,生体組織とヒータの接合抑制を目的にフッ素40%添加したダイヤモンドライクカーボン(DLC)をヒータ表面にコーティングし,ブタ大動脈血管を用いた接合実験を行った.フッ素添加DLCをヒータにコーティングすることで,ヒータと生体組織接合率を1/5に抑えられることを確認し,ヒータ表面改質を図った. ・動物実験による接合性能評価 温度100^。C,時間30秒の条件でラット頸動脈血管をin vivoで接合を行い,血流を遮断した.2週間にわたる接合部の経過観察を行った.接合後3日目において接合した頸動脈血管は他組織との癒着,炎症は見られなかった.接合後1週間目は,軽度の癒着は見られるものの,炎症は見られなかった.また接合した頸動脈血管の血流開放は接合後2週間までで見られず,本接合方法の血管止血効果を確認した.頸動脈血管接合実験から接合デバイスの十分な接合性能が確認された. ・高分子材料と生体組織の接合技術,接着補助材の開発 高分子材料に使用できる接着補助剤としてDLCを考え,DLCコーティングを血管に行った.走査型電子顕微鏡(SEM)の観察より,血管にDLCコーティングが出来ていることを確認した.DLCコーティング処理の血管と未処理の血管の接合実験より,DLCコーティングしても接合出来ることを確認した.またDLCコーティングすることで生体組織損傷をより小さくできることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的「新しい熱・振動・圧力の複合低エネルギーによる生体組織接合技術の確立」を達成するために,慢性動物実験モデルを用いた接着評価が必要である.しかし,本年度はラットを用いた急性動物実験を実施し,接着性能・安全性を評価して良好な結果が得られた.このことから本研究はおおむね順調に進展していると言える.
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