研究課題/領域番号 |
22390244
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小山 博之 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (10241994)
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研究分担者 |
三浦 裕 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40557980)
宮田 哲郎 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70190791)
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キーワード | 血管新生 / 再生組織 / 栄養血管 / スフェロイド |
研究概要 |
再生組織に対する栄養血管網付与技術開発を目的に以下の研究を実施した。 1.血管新生誘導ゲルの改良 生体内での使用が想定される血管新生誘導ゲルは、in vivoにおける様々な環境においても構造的安定性を保てなくてはならない。H22年度研究で開発した血管新生誘導ゲルは、化学修飾コラーゲンをイオコンプレックス化することにより作成するゲルであったが、生体内では様々なイオン強度の体液にさらされるため、状況によっては構造的安定性を保てない場合が観察された。そのため、H23年度研究では新規の架橋剤を開発し、それを用いたコラーゲンベースの化学ゲルを作成することに成功した。この新規の血管新生誘導ゲルは、優れた血管新生誘導能に加え生体内でも極めて安定で、且つ従来ゲルと比べて機械強度に優れているためスフェロイドを三次元配置するためのスカフォールドとしても十分に機能することが明らかになった。 2.スフェロイドの三次元配置を可能とする血管新生誘導マテリアルの開発 スフェロイドに栄養血管を誘導しつつ三次元化・重層化することを目的に、化学修飾ゼラチンの直径数百ミクロンのファイバーにより構成したジャングルジム様の三次元スカフォールドの作成に成功した。また、前述の通り新規に開発した血管新生誘導ゲルは、それ自体がスフェロイドの三次元配置用マテリアルとしても使用可能であることが明らかになった。 3.三次元配置用マテリアルによる再生臓器の大型化技術の開発 肝細胞のスフェロイドを新規血管新生誘導ゲル内に三次元的に配置し、培地内で培養するとともに、ラット筋膜下にインプラントしてその挙動を観察した。新規血管新生誘導ゲルは肝細胞の三次元スカフォールドとして良好に機能し、増殖活性が強い小型肝細胞が数日のうちにスフェロイドから周囲に向かって放射状に増殖していく様子を観察することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度交付申請書の研究実施計画欄に記載した三つの研究テーマに関してそれぞれに、ほぼ予定通りの成果を得ることができた。特に新規血管新生誘導ゲルは、良好な血管新生誘導効果を示す一方、生体内環境においても安定しているうえ機械強度にも優れているため、想定していたものよりも高性能なマテリアルに仕上がっていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のゴールである「三次元配置用マテリアルによる再生臓器の大型化技術の開発」に必要なアイテムを、ほぼそろえることができたと考えられるため、H24年度は研究の完成に向けin vivo実験をメーンとした実証研究に注力したい。また、新規血管新生誘導ゲルはその性能から実用化も可能と思われるため、まずは研究用試薬としての製品化を目標に、パテントを確保するとともに企業へのアプローチを試みたいと考えている。
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