再生組織に対する栄養血管網付与技術開発を目的に以下の研究を実施した。 1. 実用化に向けた血管新生誘導ゲルの改良 H23年度までの研究により開発した新規血管新生誘導ゲルは、優れた血管新生誘導能に加え、生体内でも安定で機械強度にも優れているため再生組織用の三次元スカフォールドとしても機能することが明らかになった。H24年度は、この新規ゲルの機能向上を目指し次の技術開発を行った。まず、ゲル化に長時間を要することの改善策として、凍結保存による架橋反応の分割法を開発した。これによって細胞や組織の包埋後、短時間でのゲル化が達成でき、viabilityを低下させることなくスカフォールドとしてのゲル内に配置することが可能となった。また、アミノ酸含有生理食塩水の添加により架橋反応を自在に停止させる方法を開発した。これによって、ゲルの架橋密度をコントロールして血管誘導能やスカフォールド性能を容易に最適化することが可能となった。 2. 三次元配置用マテリアルによる再生臓器の大型化技術の開発 血管新生誘導ゲルをスカフォールドとして内部に細胞や組織を三次元的に配置した状態で、in vivoでゲル内に血管誘導することによって、栄養血管網を伴った大型再生組織を構築するというストラテジーで実証研究を継続した。このストラテジーの問題点は、新生血管網が誘導されるまでの数日間にゲル内に配置した細胞や組織のviabilityが低下する可能性があることだ。これに対処するため、ゲル内に潅流用中空糸を留置し、そこから培養液を持続供給する「ゲル内潅流システム」のプロトタイプを作成した。肝細胞を用いた検討では、ゲル内における肝細胞の増殖を伴った長期生存を達成し、心筋細胞を用いた検討では、直径6mm大の拍動する再生心筋の構築に成功した。 以上の研究により、再生組織に対する栄養血管網付与技術開発のための基盤が確立されたと考えている。
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