研究概要 |
国内外で移植片(グラフト)の免疫寛容を得るための様々な実験が行われてきたが、未だに臨床応用可能な免疫寛容法は、時に死体臓器移植において確立されていない。本研究の目的は、死体臓器移植(腎臓・心臓)に臨床応用可能な免疫寛容誘導法を、霊長類を用いて開発することである。 これを実現するポイントは、(1)いかに骨髄細胞の巣窟を作成するか(つまり、レシピエントの骨髄細胞の一部を排除し、ドナーの骨髄細胞が生着できるようにするか)と、(2)レシピエントの胸腺細胞の機能を低下させるかの2つであり、ドナーが見つかった後、移植までにこの二つのポイントを実現できれば、死体臓器移植にも応用可能と考えている。 本年度は、移植前の実験として、アカゲザル4頭のリンパ球分画を調査した。ヒトのCD2,CD3CD,4,CD19,CD22などに対する抗体を用いて、FACSをおこなったところ、CD2,CD20は各々79%,15%陽性細胞を認めたが、CD3CD,4,CD19は0.1-0.5%と少なかった。同時に、アカゲザル15頭のリンパ球を用いて、mixed lymphocyte reaction (MLR)を行ない、high responderとlow responderの組み合わせを選択した。 サイモグロブリン(Rabbit anti-human thymocyte globulin製剤)の投与により、胸腺細胞を減少できると考えられた。関西医科大学病理学第一講座池原進教授に、骨髄細胞の髄内移植法の手技の指導を受け、上記(1)(2)のポイントを実現するための、準備がほぼ終了した。キメラの状態を解明できるように、ドナーを雌のアカゲザル、レシピエントを雄のアカゲザルとし、夫々のリンパ球を採取して、ドナーとレシピエントを区別できる方法を検討し、区別する方法を開発した。来年度は、実際の腎臓移植を行う予定である。
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