研究課題/領域番号 |
22390248
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
後藤 満一 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (50162160)
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研究分担者 |
斎藤 拓朗 福島県立医科大学, 医学部, 医監兼教授 (20305361)
穴澤 貴行 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (90566811)
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キーワード | 膵島 / 亜致死刺激 / 免疫寛容 / 細胞周期停止 |
研究概要 |
細胞死を回避した膵島が免疫不応答を誘導する機構解析をおこなうため、□細胞死を回避した細胞はストレスに抵抗性を獲得することが出来るかどうか、□細胞死を回避した細胞はホストの免疫応答を制御するかの2点についての解析を進めている。 ラット分離膵島を培養すると、経時的にその生存膵島数は減っていく。膵島の減少には培養中に起こるapoptosisよりも主にcentral necrosisが関与することを明らかにした。培養中のストレスに対して細胞死を回避し生存した膵島を糖尿病マウスに移植すると、同量の分離直後新鮮膵島を移植した系より良好な移植成績(血糖制御効果)が得られた。この結果は、細胞死を回避した細胞が移植というストレスに対しても抵抗性を獲得したことが、良好な移植成績に寄与した可能性を示唆するものと考えられた。 その機構解析に取りかかるために、分離後膵島の培養中に起こる変化の解析に取り組んだところ、膵島分離直後にはcalreticulinの表出が強く認められるものの、培養につれて経時的にその表出が減弱する傾向があることを明らかにした。近年、細胞死に先立ってcalreticulinが表出し、その表出がtriggerとなり免疫原性細胞死を引き起こすことが示されつつある。細胞死を回避した膵島にcalreticulinの表出の減弱化という変化がおこり、結果的に移植グラフトの免疫原性を低下させることが、移植後成績の改善に寄与した可能性もあると考察し、細胞死を回避した細胞がホストの免疫抑制を制御するかについてのさらなる機構解明を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞死を回避した膵島を移植することによる移植成績の改善により、細胞死を回避した細胞がストレスに抵抗性を獲得するという仮説が証明されつつある。また細胞死回避後の膵島にはcalreticulinの表出低下が明らかになりつつあり、細胞死回避による免疫寛容誘導の機構解明という計画の達成の基盤が確立されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
細胞死を回避した細胞がストレスへの抵抗性を獲得したとするエビデンス、およびホストの免疫応答をどのように制御するかのエビデンスの蓄積を行う。 特にcalreticulinの動態とストレスへの反応・免疫応答が密接な関与をしていると考え、calreticulinの表出刺激と、表出を阻害しうる薬剤の検討を行い移植成績のさらなる改善を目指す。
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