研究課題
重症糖尿病に対するインスリン産生細胞(膵島)移植は21世紀の細胞移植、再生医療の先駆的治療法として今後の発展が期待されている。臨床膵島移植の現在の最も重要な課題は一人のインスリン依存糖尿病レシピエントの治療に2-3回の膵島移植、すなわち2-3人分のドナーを必要とする非効率性が上げられる。これは膵島移植特有の問題で、移植後早期(24時間以内)に発現する移植膵島細胞死に起因している。先に我々はこの成因として移植部位(経門脈的肝内)での自然免疫拒絶反応、さらにその惹起因子としてHMGB1を同定した。本研究では移植膵島よりのHMGB1放出機序を明らかにし、移植膵島細胞死の新規制御法を見出すことを目的とした。本研究の特色として再潅流障害での細胞死への関与が報告されているイオントランスポーター、Na+/Ca^<2+>交換体(NCX)に着目し、以下のごとく低酸素膵島細胞障害の機序、ならびに制御法に関する新規知見を得た。#1.マウス(C57BL/6)単離膵島を低酸素ガス(1%O2+5%CO2+94%N2)で満たしたチャンバー(37C)内で培養する低酸素下培養単離膵島細胞死のin vitroモデルを確立した。#2.NCX阻害剤を用いて低酸素下培養膵島細胞死にNa^+/Ca^<2+>交換体が関与していることを明らかにした。#3.膵島細胞に於けるNCXの存在をRT-PCR,western blotting,免疫組織染色で明らかにした。#4.膵島移植の実験系でNCXインヒビターでのドナー膵島移植前処理により移植膵島障害が制御できることを明らかにした。
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Cell Transplant.
巻: VOL.19 ページ: 731-741
Transplantation
巻: VOL.90 ページ: 740-747