研究課題
臨床膵島移植の現在の最も重要な課題は一人のインスリン依存糖尿病レシピエントの治療に2-3回の膵島移植、すなわち2-3人分のドナーを必要とする非効率性が上げられる。この課題は膵島移植特有の問題で、現在までの我々の研究成果で移植後早期(24時間以内)に発現する移植膵島細胞死に起因していることが判明している。本研究ではこの課題に関し、新規制御法を見出すことを目的とした。平成22年度および23年度の研究で以下の知見を得た。①移植早期膵島細胞死は移植部位である門脈の低酸素に起因、その細胞死にNa+/Ca2+交換体(NCX)が関与し、NCXの特異的インヒビターにより膵島細胞死は制御できる。②NCX isoform の解析により、膵島β細胞には主にNCX1が発現している。さらにNCX1+/- ならびにNCX1Tgマウスの単離膵島を用いて移植膵島障害に於けるNCX1の役割を明らかにできた。③同種異系移植膵島障害においてもNCX インヒビターにより制御が可能である。④サル膵島にNCXが発現していることを免疫組織学的に明らかにできた。以上の成果を踏まえ、平成24年度はヒト膵島を用いた実験を行った。ヒト単離膵島は米国共同研究者よりフェデックスで搬送し、実験に使用した。その結果、ヒト膵島にはマウス膵島と同様にNCX1が優位に発現し、ストレプトゾトシンで糖尿病を作成した免疫不全マウス(NOD/scid)への移植実験で、NCXインヒビターによる前処置で移植後のヒト膵島細胞死が制御でき、生着率が向上することが判明した。以上の知見は膵島移植に於いて、レシピエントではなく、ドナー膵島を標的にした治療法で、移植膵島細胞死を制御できることを示した初めての知見で、論文にまとめ、移植部門では世界のトップジャーナルであるAmerican Journal of Transplantationに投稿し、採択された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Am J Transplant
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Transplantation
巻: 93(10) ページ: 983-8
10.1097/TP.0b013e31824d3508