研究課題/領域番号 |
22390253
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
江川 新一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (00270679)
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研究分担者 |
岡田 恭穂 東北大学, 大学病院, 助教 (10375074)
林 洋毅 東北大学, 大学病院, 助教 (30422124)
坂田 直昭 東北大学, 大学病院, 助教 (50431565)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 膵癌 / 胆道癌 / 免疫療法 / WT1ペプチドワクチン / プロテオミクス / 腫瘍特異的抗原 / 化学療法 / 樹状細胞 |
研究概要 |
「化学療法抵抗性の進行・再発膵癌に対するWT1 ペプチドを用いた免疫治療パイロット研究(UMIN000001515)」では生存期間中央値がワクチン投与後8か月に延長しただけではなく、現在も長期生存を継続している患者が1名存在する。大阪大学、慈恵医科大学などと共同で、「切除不能進行膵臓癌に対するゲムシタビン併用WT1ペプチドワクチン化学免疫療法とゲムシタビン単独療法のランダム化第II相臨床試験 多施設共同研究(UMIN000005248)」を継続実施中であり、切除不能進行膵癌に対する初回治療として症例を集積中(平成24年度の新規登録3例合計8名)である。ワクチン併用により長期SDを継続する症例が複数あり、また、ゲムシタビン単独治療で進行したためプロトコールに則りワクチン併用療法にクロスオーバーした1名がPRを達成し、ワクチン併用療法の効果が示唆された。 患者末梢血のWT1特異的CTLおよび抑制型T細胞をFACScanにて測定し、臨床効果との相関を検討した。各種膵腫瘍切除標本の免疫染色による検討で、管状腺癌におけるWT1の発現頻度は70.8%(n=24)、IPMNでは64.0%(n=25)、膵神経内分泌腫瘍(PNET) では68.4%(n=25)、膵腺房細胞癌(ACC)では100%(n=3)であった。また腫瘍血管はほとんど全ての腫瘍で染色された。PNET, ACCでは染色強度も強くWT1免疫治療の新たな対象疾患となる可能性が示唆された。膵癌・胆道癌切除標本のパラフィンブロックを用いたプロテオミクス解析により、予後因子となりうる標的分子を同定し、免疫染色にてその発現様式を検討した。膵癌細胞株を用いて腫瘍細胞を腫瘍抗原として樹状細胞に取り込ませる基礎実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多施設共同無作為比較第II相試験は全国的にも順調に症例集積が進んでいる。分担研究者ならびに技術補佐員は、臨床試験の実施、末梢血単核球の分離とFACScanによる解析、宿主と腫瘍の免疫学的解析、各種腫瘍におけるWT1発現の解析などの役割をそれぞれ果たしている。 膵癌ならびに各種膵腫瘍におけるWT1発現から新たな知見が得られた。 免疫治療が奏功した患者が存在しないため、SEREX法は実施できていないが、切除標本を用いた絶対定量プロテオミクスにより膵癌・胆道癌における予後規定因子となる分子の同定を行うことができた。 HLAが合致しない患者に対する低侵襲性の腫瘍細胞採取と樹状細胞への負荷に関する基礎検討は継続して実施している。
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今後の研究の推進方策 |
多施設共同無作為比較第II相試験は目的症例数の150例(全国)に達するまで継続する。膵癌以外の膵腫瘍、胆道癌に対するWT1免疫療法の臨床試験を計画・開始する。とくに膵神経内分泌腫瘍、膵腺房細胞癌は有力な候補として推進する。 プロテオミクスにより得られた標的分子の免疫標的としての可能性を追求し、膵癌・胆道癌に対する免疫療法の新たな展開をはかる。 癌性腹水、肝転移などを有する進行膵癌・胆道癌患者からの低侵襲性の腫瘍細胞採取ならびに樹状細胞への負荷、安全・効果的な免疫療法の基礎的検討と臨床応用を推進する。
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