研究課題
DNAメチル化異常を詳細にゲノム上にマッピングし癌のエピゲノム異常を解明し消化器癌症例を層別化することは、癌の複雑な遺伝子制御異常を明らかにするために必須である。大腸癌は3つの異なるメチル化エピジェノタイプに分類されるが(Yagi et al.Clin Cancer Res 2010)、今年度は前癌病変として大腸腺腫、大腸異常腺窩、さらに大腸正常粘膜について定量解析を終えた。大腸癌で認められた高メチル化群とBRAF変異の相関関係は鋸歯状腺腫に認められ、鋸歯状腺腫が高メチル化群大腸癌の前癌病変と思われた。従来型の非鋸歯状腺腫が、中メチル化群と低メチル化群の2群に分類される事、中メチル化群とKRAS変異の相関関係はすでに構築されていることを同定しメチル化エピジェノタイプは腺腫の段階で完成していた(Yagi et al.Am J Pathol,2012)。正常線維芽細胞でRas遺伝子を活性化させ早期細胞老化を誘導するとヒストン修飾がダイナミックに協調的に変化しBmp2-Smad1シグナルが活性化することが重要であることを同定し、Bmp2-Smad1シグナルおよびその下流標的遺伝子がメチル化異常により破綻することがRas陽性癌の発癌機構の一つとして考えられた(Kaneda et al.PLoS Genet 2011)。胃癌のメチル化解析はInfiniumビーズアレイを用いて行った。胃癌は低メチル化群、高メチル化群、超高メチル化群の3群にクラスターされ、超高メチル化群は全てEBウィルス胃癌であった。低メチル化群の胃癌細胞株にEBウィルスを感染させると異常メチル化が誘導されて超高メチル化群を呈した。EBウィルス感染そのものが超高メチル化群の原因であることを証明した(Matsusaka et al.CancerRes,2011)。
2: おおむね順調に進展している
先行していた大腸癌については前癌病変に関してエピジェノタイピング解析が順調に進行し、発癌機構としてRas誘導性細胞老化の重要な機構がメチル化異常により破綻していると考える研究が順調に進行。さらに、昨年度の肝癌に加えて胃癌のエピジェノタイピング解析も順調に進行。いずれも論文発表まで行った。
大腸癌はさらに前癌病変検体を増やして解析を進め、また臨床応用可能なマーカーの樹立を目指す。胃癌についてはEBウィルスによる異常メチル化誘導の解析を進める。いずれも特に問題点はない。
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doi.org/10.1016/j.ajpath.2011.10.010
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http://www.genome.rcast.u-tokyo.ac.jp/