DNAメチル化異常の網羅的解析により癌のエピゲノム異常を解明し消化器癌症例を層別化することは、癌の複雑な遺伝子制御異常を明らかにするために必須である。大腸癌は3つの異なるメチル化エピジェノタイプに分類されるが(Yagi et al. 2010)、前年度までに前癌病変として隆起型大腸腺腫および大腸異常腺窩を解析し、鋸歯状腺腫が高メチル化群、従来型の非鋸歯状腺腫が中メチル化群と低メチル化群の2群に分類される事を同定した (Yagi et al. 2012)。今年度はさらに平坦型の前癌病変および早期癌約100例について、これまでに同定しているメチル化マーカー25個に対しDNAメチル化をパイロシーケンス法により定量解析した。引き続き遺伝子変異解析を行ってその相関を解析する予定である。また早期細胞老化に重要な因子候補を前年度までに同定したが(Kaneda et al. 2011)、その中で癌で異常メチル化標的となる因子を抽出し、大腸癌細胞株への発現導入により細胞増殖抑制作用を同定した。臨床応用可能なマーカーとしてほとんどの大腸癌で異常メチル化されるマーカーを抽出し、大腸癌患者67例、正常20例の血漿サンプルを用いて血漿中DNAのメチル化状態を解析した。胃癌のメチル化解析は、前年度までのInfiniumビーズアレイ解析により、低メチル化群、高メチル化群、超高メチル化群の3群のクラスターを同定し、EBウィルス感染実験によりEBウィルス感染そのものが超高メチル化群の原因であることを証明した(Matsusaka et al. 2011)。今年度はMeDIP-seqによるEBウィルス陽性胃癌の網羅的メチル化解析、Burkittリンパ腫のメチル化解析の結果、ホスト細胞中のウィルスゲノムとホストゲノムのメチル化状態の類似性を報告した (Kaneda et al. 2012)。
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