腸上皮細胞特異的ホメオボックズ転写因子CDX2の消化管癌における発現機構解析の過程で、CDX2のプロモーター領域に腸上皮特異的転写活性領域を同定し、それを利用したコンディショナルノックアウトマウスを作製して、2種類の新規大腸癌マウスモデルの作製に取り組んできた。大腸上皮特異的転写活性配列であるCDX2P9.5kbを利用して大腸上皮特異的Apcコンディショナルノックアウトマウス(CPC;Apc^<+/loxP>、ヘテロ)と、マイクロサテライト不安定性を利用した新規の発現誘導型Apcコンディショナルノックアウトマウス(CDX2P-G22-Cre;Apc^<loxP/loxP>、ホモ)を作製して、発生した腫瘍性病変の形態および遺伝子変異の解析を行った。CPC;Apc^<+/loxP>マウスでは、ApcのLOHにより遠位大腸に5-8個大腸癌が発生し、ヒト左側大腸癌のモデルとして有用と思われた。300日齢のマウス36匹中6匹(17%)で、粘膜下浸潤癌を認めた。広範囲でのDNAメチル化と異数性(aneuploidy)が認められた。またCDX2P-G22-Cre;Apc^<loxP/loxP>マウスでは、マイクロサテライト不安定性に依存して近位大腸に発生した腫瘍が粘膜下に浸潤し、ヒト右側結腸癌のモデルとして有用と思われた。ほぼ全例が30日齢までに腫瘍死した。大腸上皮細胞特異的プロモーターを利用してadenoma-carcinoma sequence型の左側結腸癌モデルとマイクロサテライト不安定性に依存してde novoに発生する右側結腸癌モデルが確立された。これらのモデルにApc+K-Ras変異型のダブルノックアウトモデルを作製し、腫瘍の構築、網羅的遺伝子解析を行っている。これらのモデルは発癌機構の解明のみならず、癌幹細胞、および微小環境や免疫応答についての幅広い研究に有用であることが示唆された。
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