研究課題/領域番号 |
22390259
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
平田 公一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50136959)
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研究分担者 |
三高 俊広 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50231618)
水口 徹 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30347174)
中村 幸雄 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (50516648)
目黒 誠 札幌医科大学, 医学部, 助教 (50448601)
川本 雅樹 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70404605)
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キーワード | 肝臓外科学 / 肝再生 / 組織幹細胞 / 細胞移植 / 肝機能 |
研究概要 |
1.小型肝細胞特殊マーカーを用いた肝細胞評価・肝再生・修復能予知を目指した研究 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の増加は、臨床上の問題となっている。Choline deficient食(CDAA)はNASHの動物モデルの一つとして有用であり、これを投与することにより肝硬変が起きることを確認した。この肝硬変ラットに対し70%肝切除術を施行すると平均生存期間は2.67±0.75日であったが、新鮮肝細胞1.0X10^7個を移植した後に70%肝切除術を施行すると平均生存期間は5.11±0.78日と有意な延長を認めた。移植群においてレシピエント肝細胞における増殖能が有意に改善し、TUNEL法による細胞死は非移植群で高率に観察された。蛋白発現解析では、肝細胞移植群において細胞増殖に関連した蛋白の発現が有意に増加し、細胞死に関連した蛋白の発現は有意に減少していた。従って、肝細胞移植はNASHに関連した肝硬変における肝切除術に対して、肝細胞増殖を促進しアポトーシスを抑制することで生存期間の延長に寄与していたものと考えられた。 2.肝再生能を予測する肝機能評価に関する臨床研究 肝再生を予測する肝機能評価は、多岐にわたる臨床的評価指標が存在している。本研究ではクラスター解析を行い、肝機能指標は5つのクラスターに分類された。分類されたクラスターを利用し、肝機能の改善治療を評価できる因子としてBTRを基準とし、同一クラスターおよび相違クラスターからALBおよびHGFによってALB-BTRおよびHGF-BTRを各々分類すると特定のサブグループにおいて無再発生存期間が短縮していることを証明した。このことは、特殊アミノ酸による食事療法の適応決定に有用であることが示唆される。また、肝機能の画像表評価法としてアシアロシンチグラフィーにおいて継時的にGSAのスペクトカウンターを算出するソフトウェアーを開発し、AACとした新規指標を開発した。従来のHH15やLHL15と比較し、肝炎や肝硬変の診断能としてAUCにおいて改善しおり、AACは肝機能評価法として有用であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝硬変に対する外科治療介入に関して、短期的効果と長期的効果に関して一定の結果を得た。短期的効果に関して論文をすでに投稿した。長期的効果に関しては、肝再生置換モデルとしては非常に効率性の高いモデルを開発できた。さらに、肝幹細胞が成熟肝細胞へ分化し、肝細胞索に取り込まれていく過程と周囲実質肝細胞と細胞接着器官の発現によって詳細な機序を解明できたことは想定外の収穫となった。
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今後の研究の推進方策 |
ハイブリットマウスの開発と代謝性先天疾患の肝細胞置換療法の開発を目指していく。本研究では、肝細胞再生置換率は個体によって大きな違いを認めた。肝幹細胞と考えられる小型肝細胞と成熟肝細胞を比較した再生置換効率には大きな相違がない。このことは再生置換できる細胞群はどちらの分画細胞にも存在していることを示している。また、再生置換にかかる再生様式には肝細胞索に沿ってゾーンにしたがって置換再生するものと島状に集塊を形成するものとが存在するが、明らかに肝細胞索に沿って置換される法が高効率に再生置換が起きている。このことは、グリソン周囲に幹細胞が存在できるニッチの存在を示唆している。また、食事内容でアミノ酸の比率を変えることで再生置換効率が変化する可能性が示唆されている。課題として、再生置換できる細胞の同定法、再生置換できる細胞のグリソンニッチへの高効率な移植法、再生置換を可能にする特殊配合アミノ酸を用いた食事療法の開発がある。これらの解明は、肝細胞移植の臨床応用を早期に実現できるものと考えている。
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