研究概要 |
クラニアルウインドウ法を用いてヒト血管内皮細胞(HUVEC)・ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)により完全ヒト型微小血管網の再構築が可能であるかを検証し、その構築過程を定量化するとともに、この血管網を用いたヒト肝組織の再構成を試みた。EGFP(enhanced green fluorescence protein)遺伝子で標識したHUVECとKO(Kusabira Orange)遺伝子で標識したhMSCをCollagen-Gel内に共培養することによりヒト型血管の成熟過程をライブにて定量した。移植後2週目には構築された血管の一部で宿主からの血流が認められ、移植後8週目では構築が維持された血管網ほぼ全てで血流が確認された。hMSCを移植しないHUVECのみの系では構築された血管網は未熟で一週間程度で退縮した。KO-hMSCはHUVECからなる微小血管を取り囲むように遊走し、移植後4週後には約8割の血管網はhMSCに裏打ちされた。このことよりhMSCが血管壁細胞として血管網の成熟安定化に関与していることが示唆された。Collagen-GelにKO-HUVEC,hMSCと更にEGFPを導入したヒト胎児肝臓細胞(hFLC)を共培養し、クラニアルウインドウ内に移植したところ、EGFP-hFLCは宿主よりの血流を有する血管網を形成しながら移植後4週まで順調に増殖し、血管網の密度も徐々に上昇した。この微小血管網は最初KO-HUVECにより構築されていたが、KOの導入された血管網の比率は徐々に減少し、4週までにほぼ消失した。このことより微小血管網の血管内皮は宿主由来、または、hFLC由来の内皮細胞に置換した可能性が示唆された。移植後4週目の組織を用いて免疫染色を行ったところ、形成された組織には上皮マーカーであるCK8/18、胆管細胞マーカーCK19、CK7が確認され、血管網を有する肝様組織が再構成されたと考えられた。現在、GFP,CD31の免疫染色により、血管内皮細胞の由来を観察中で、今後、更に安定した肝組織の構築とその成熟過程の定量化を試みる予定である。
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