研究課題/領域番号 |
22390262
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
平川 弘聖 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40188652)
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研究分担者 |
八代 正和 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60305638)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / スキルス胃癌 / 抗癌剤耐性能 / 腹膜転移能 |
研究概要 |
がん幹細胞は転移・抗癌剤耐性などの癌難治性に関与すると考えられており、新規癌治療法開発にはがん幹細胞の特性解明が重要である。スキルス胃癌は腹膜播種性の転移再発が高頻度で、極めて難治性の癌である。今回、スキルス胃癌幹細胞の転移能や抗癌剤耐性能について検討した。 ①がん幹細胞性の解析:スキルス胃癌細胞株および胃線維芽細を用いた。FACScanにより癌幹細胞を多く含むSP分画をソーティングした。SP細胞は親株に比し腫瘍形成能が極めて高くがん幹細胞性を有していた。 ② 腹膜転移能の解析:スキルス胃癌幹細胞は膜転成分に対する接着能が有意に亢進していた。癌幹細胞は接着分子CD44H、α3β1-integrin、α5β1-integrinが高発現し、マウス腹膜転移形成能が有意に亢進していた。 ③ 抗癌剤耐性能の解析:スキルス胃癌幹細胞の抗癌剤IC50値はOCUM-2Mに比べirinotecanで7.9倍、oxaliplatinで2.7倍、taxolで2倍高値であった。幹細胞シグナル抑制剤であるc-Met阻害剤は、癌幹細胞のirinotecanのIC50値を低下させた。c-Met阻害剤はUGT1A1およびABCトランスポーター発現を抑制した。また、c-Met阻害剤は癌幹細胞の細胞周期M, G2を増加させ、irinotecanの感受性を亢進させた。 以上のことから、スキルス胃癌には癌幹細胞が存在し、癌幹細胞は抗癌剤irinotecan耐性に関与し、c-Met阻害剤はその耐性治療薬として有効と考えられた。また、癌幹細胞がスキルス胃癌腹膜播種形成に重要で、接着分子CD44やintegrinの関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スキルス胃癌幹細胞は転移能や抗癌剤耐性能が亢進していること、またその機序として接着分子や代謝酵素・トランスポーター発現が影響していることが解明出来た。
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今後の研究の推進方策 |
スキルス胃癌幹細胞と間質細胞との相互作用の観点からも、この腹膜転移能や抗癌剤耐性能を検討し、治療法の開発を行う。
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