研究課題
癌組織より最初にリンパ流を受けるセンチネルリンパ節における癌転移巣では、転移の最初期に生じる現象が観察されると予想されるが、癌細胞の不均一性の為に組織全体で同じ変異が生じ、これが継続することはない。この組織中で不均一に生じる変異を、MALDI-IMSを利用して同定すると同時に可視化することで、変異の局在を二次元情報として把握することが可能である。我々はこの手法を用いて、乳癌における針生検検体へその応用を広げ、解析を施行した。穿刺吸引法により採取された乳癌針生検検体は30秒以内に液体窒素へ保存することが可能であり、検体の劣化が生じることがないため、メタボローム解析やMALDI-IMSによる解析に非常に適している。我々は乳癌におけるintrinsic subtype別の代謝活性の違いを明らかにすることを目的として、サブタイプごとにまずはCE-MSを用いたメタボローム解析を行い、特にトリプルネガティブ乳癌における非常に特徴的な差異を検出することが可能であった。またこれら特徴が癌部・非癌部等の組織のどの部位に認められるのかを同定するため、MALDI-IMSを用いて2次元平面上で質量分析の画像の作成を試みた。まず各サブタイプに属する乳癌細胞株を用いてマウス異種移植モデルを作成し、採取した腫瘍におけるサブタイプ間の相違をMALDI-IMSを用いて解析を行った。さらに、ヒト臨床検体を用いて同様の差異が観察されるかを検討したところ、特定の代謝産物の発現が細胞株からの腫瘍における発現に一致することが観察され、抗癌剤耐性に関わる物質であることが同定された。今後は本代謝産物に着目し、これら代謝経路の差異を利用して、抗癌剤への感受性を予測可能か否かを検討していく予定である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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