研究課題/領域番号 |
22390268
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
野一色 泰晴 横浜市立大学, 医学研究科, 特任教授 (60033263)
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キーワード | 癒着防止膜 / 外科 / 組織・細胞 / 臨床 |
研究概要 |
これまでの研究結果より、創傷治癒と癒着現象を詳細に観察した結果、周囲臓器との間にフィブリン網が析出し手術創で持続的に産生される細胞成長因子がトラップされ、それに惹起された線維芽細胞が侵入しコラーゲン線維を産生する事が癒着の実体であること、細胞性因子は疎水性物質に吸着されやすいこと、高含水ハイドロゲル中では線維芽細胞がコラーゲン産生活動を行わないこと、等を明らかにした。今年度は、周囲組織との間にフィブリン網を作らせない、創部をハイドロゲルで隔離する、産生される細胞成長因子を創部から拡散させる、等で癒着防止が得られるのではないか、という仮説を立て動物実験を行った。現時点では、この仮説に基づいた癒着防止膜を動物に植え込み、予期した成果が得られつつある。 本研究の仮説は2つの部分から成り立っている。一つは周囲組織との間にフィブリン網を防ぐことであり、もう一つは細胞成長因子を拡散させることである。我々は細胞成長因子が疎水性物質に吸着され癒着を促進すること、及び含水性の高いハイドロゲル内では線維芽細胞が活動を停止しコラーゲン線維を産生させない事、を見出し、本研究では疎水性とは逆に高含水性のハイドロゲルを用いて細胞成長因子の吸着と細胞侵入を阻止する手法を開発した。 次に、創部では治癒過程では細胞成長因子が持続的に産生されるので、膜表面にグリセリンを含ませ、グリセリンに吸収される水の層を形成させ、水の流れによって創部で産生される過剰な細胞増殖因子を拡散させるアイデアを生み出した。その結果、予期した癒着防止膜の基礎実験に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の仮説に基づいた実験計画を修正せざるを得ないような事は生じていない。 動物実験を行う上で、動物の入手は維持管理などで、時期的なズレはあるものの、それは予測の範囲内であり、大幅な計画変更には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度が最終年度であるので、この1年で成果を取り取りまとめる。 更には、成果を基に、この技術を用いた事業化を行ってくれる企業を募るつもりである。 癒着防止膜は、臨床の現場から需要が高いのにも関わらず、現在臨床で使用されている癒着防止膜は輸入品であり、その結果として医療費の海外流出が続いている。この現状を阻止するために、可能な限り早急に実用化を目指す活動を、本研究の取りまとめと共に行うつもりである。
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