1)動物の胸腔内ハイドロゲル膜挿入実験 すでに得られたデータから臨床使用可能な形態をもち、オートクレーブ、エチレンオキサイドガス、電子線、ガンマー線、のいずれかの滅菌に耐えるハイドロゲル膜を作成し、成犬の胸腔内に肺組織の表面に貼り付けるように挿入。3週間後と3ヶ月後にCT検査で肺組織の癒着チェックを行った。更に組織切片から癒着阻止および創傷治癒状況を観察し、膜の生体内吸収度、癒着阻止度などの改良型癒着防止膜作成の資料を得た。 2)癒着防止膜挿入方法の再検討 用手的挿入と遠隔操作的挿入:パイロットスタディーでは現在は開胸し、膜を手で広げているが、リスクの高い患者、高齢者などで非侵襲的な内視鏡手術にも適応可能なように、遠隔操作で癒着防止膜を挿入し、目的とした部位で広げる手法の開発が必要である。市販のセプラフィルムは膜同士が癒着し、折り畳み・拡張が不可能であるが、本研究の癒着防止膜では、折りたたみ、挿入し、広げる、という動作の遠隔操作法の開発を行った。 スプレー散布法による抗癒着性膜の開発:内視鏡手術に適した手法としては、目的とした部位においてスプレー散布による膜形成法も必要と予測されるので、これに対応したグリセリン含有ハイドロゲルの開発を行った。ハイドロゲルは水のような物であって組織に粘着させる事は考えにくい。しかし我々は超微細なパウダーに加工することでvan der Waals力によって組織に吸着され易くなることを発見した。そして吸着後にグリセリンを用いてハイドロゲル層を組織表面に形成させる事に成功した。しかし次にパウダー粒子の中にグリセリンを持たせる技術が課題となる。そこで我々は超微細パウダー粒子内部にグリセリンを滴状に混在させる技術に取り組み、その基礎実験に成功した。
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