研究課題/領域番号 |
22390273
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山嶋 哲盛 金沢大学, 医学系, 准教授 (60135077)
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キーワード | サル / 海馬 / ニューロン新生 / ドコサヘキサエン酸 / GPR40 / CREB / BDNF / TrkB |
研究概要 |
ドコサヘキサエン酸(DHA)やアラキドン酸などの多価不飽和脂肪酸(PUFA)は脳の発達や維持に関与するだけではなく、成体脳におけるニューロン新生を制御することで学習記憶や精神疾患とも密接に関係している。PUFAはG protein-coupled receptor 40(GPR40)のリガンドであることが知られているが、ニューロン産生ニッチにおけるその情報伝達機構については未知である。平成23年度は成体脳ニューロン新生の亢進を示す一過性完全脳虚血ザルを用いてGPR40と転写因子であるphosphorelated cAMP response element-binding protein(pCREB)の発現について検索した。同時に、pCREBの下流にあるbrain-derived neurotrophic factor(BDNF)とそのレセプターであるrtopomyosin receptor kinase B(TrkB)の発現に関しても検索した。すでに報告したように、ウエスタンプロットではGPR40は虚血付加後の第2週目に発現が亢進していたが、pCREBも虚血第2週目に発現が亢進しており、しかも海馬のニューロン新生の増加の時期と一致していた。免疫組織化学的にもGPR40とpCREBの局在発現パターンはほぼ一致しており、歯状回下層(SGZ)の成熟ニューロンや新生ニューロン、星状膠細胞などに発現していた。GPR40/pCREBの2重陽性細胞は虚血15日目のSGZにおいて有意に増加していた。一方、BDNFの成熟型(mBDNF)とTrkBの蛋白質は有意な発現増加を示さなかったが、mBDNFの前駆体であるproBDNFは虚血9日目にピークとなっていた。さらに、免疫組織学的には新生ニューロンはBDNFを発現するが、TrkBは発現していなかった。以上の結果から、成体脳海馬においてPUEAによってニューロン新生が惹起されるためには、同じシグナル伝達経路内においてGPR40とpCREBおよびBDNFが連動していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)霊長類に特異的な成体脳ニューロン新生のシグナル経路の入口と出口とを把握し得たが、中間経路についてはまだ不明な点が多く、今後さらなる検索を要する。 2)上記のGPR40-CREB-BDNFカスケードが生体内でPUEAによって惹起されているか否かについては、完全に証明された訳ではない。
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今後の研究の推進方策 |
1)については、phospholipase Cやcalmodulin kinase IV、Akt、ERK1/2、mapkinaseなどの分子の虚血負荷後の動きを見る必要がある。 2)については、虚血ザルに投与するPUFAの量を変えて、dose-dependentにGPR40やCREBの活性化、およびBDNFの産生量の増加が起きていることを証明する必要がある。
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