研究課題/領域番号 |
22390276
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
鈴木 倫保 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80196873)
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研究分担者 |
大和田 祐二 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20292211)
藤井 正美 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (90181320)
野村 貞宏 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (20343296)
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キーワード | 機能脳神経外科学 / 脳低温 |
研究概要 |
本研究の目的は難治性てんかんの新しい外科治療法としての脳局所冷却法を確立することである。23年度は個体の行動学的解析により治療の安全性を検証しつつ、疾患へのneuromodulationによる応用拡大を目指した。 1.サルに対する冷却パッドの埋込みの実施 二頭のサルに対して、冷却パッドの埋め込みを実施した。いずれの動物においても十分な冷却効果を得られた。てんかん発作に関しても冷却開始から7分以内に目的の温度域にて脳表冷却することで発作を抑制し、30分以上の長時間の安定した冷却が可能であることを確認した。一頭目のサルに対しては初期に軽い麻痺が見られ、これは冷却パッドによる脳表の押さえつけが原因と考えられた。二頭目に関しては脳表への接触具合を抑えつつ冷却性能を維持することができた。今後は、最適な設置圧力の手法についての検討を実施する。 2.フレキシブル冷却パッドの開発 冷却パッドの試作を2回実施した。冷却性能・耐久性・フレキシブル性に関しては脳内留置可能な性能であることを試験により確認した。また、ポリイミド以外の素材として、ポリウレタンを用いた冷却パッドも試作し、頭蓋内留置可能な素材・形状・機能性に関して最適解を得ることができるよう選択肢を追加した。硬膜下への留置を想定して開発しているが、てんかん手術における適用可能症例が少ないため、初期の適用を術中MEPに軌道修正し、可能なサイズ・機能のパッドを開発する。 3.冷却水灌流型装置の開発 ポンプ部、冷却部、温度制御部を一体化させた装置を試作し、動作試験を実施した。また、臨床適用を想定して、ポンプ部は脈動の少ない遠心ポンプとし、ディスポタイプにより滅菌度を保持可能とした。フェイルセーフシステムの導入を達成するべく、これまでの実験結果より得られた問題点やその他の様々な可能性を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大型動物を使った安全性検証が予想以上に進んでいる。微視的な安全性研究も進めているがこちらは公表するに十分なデータではない。総じて順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
大型動物においても脳局所冷却にてんかん抑制作用があり、冷却による機能障害は認められないことが明らかとなった。今後は神経細胞、アストロサイトへの影響など、微視的な面からの安全確認を進めていく。本研究の目標は順調に達成されてきており、最終年度に向けて計画の変更は必要ないと思われる。
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