研究課題/領域番号 |
22390278
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
近藤 亨 愛媛大学, プロテオ医学研究センター, 教授 (30270573)
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キーワード | グリオーマ幹細胞 / Sox11 / Plag11 / エピジェネティクス |
研究概要 |
グリオーマ幹細胞は転写因子Soxl1陰性・Plagl1陽性であり、これら因子の機能解析を進めると共に、複数の新規ヒトグリオーマ幹細胞株を樹立し、以下の研究成果をあげた。 1、新規に作製したラビット抗Plagl1ポリクローナル抗体を用いて、マウス脳でのPlagl1の局在を検討し、Plagl1が脳室下帯に存在するNestin陽性細胞(神経幹細胞)に強く発現していること、脳の広い領域に弱陽性細胞が存在することを発見した。これは、既に報告されているin situ hybridizationのデータと同じ結果であった。次いで、胎生期14,5日胚から調整した初代培養神経幹細胞の90%以上がPlagl1陽性であること、増殖因子非存在下における神経幹細胞の分化に伴い、Plagl1の発現が著しく減少することを発見した。Plagl1の強制発現が神経幹細胞の維持に働いている結果と共に、これらの結果は、Plagl1が神経幹細胞性に関与していることを示唆している。 2、マウスグリオーマ幹細胞におけるPlagl1の機能解析を進めた結果、.Plagl1がDNA修復に関与していることを発見した。現在その分子機構の解析を進めている。 3、臨床グリオーマサンプルの至適細胞分散方法とそれら細胞の至適培養方法を確立した。新規に樹立したヒトグリオーマ細胞株は、免疫不全マウス脳内への移植によりヒト腫瘍に類似した病理所見を有する腫瘍を形成することが判明した。今回樹立した細胞株には、腫瘍形成能を保持した世界初のAnaplastic oligodendroglioma (WHO grade III)とDiffuse astrocytoma (WHO grade II)由来細胞株を含む。 4、DNAマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析の結果、樹立したヒトグリオーマ幹細胞株においてもSoxl1の発現が抑制、Plagl1の発現が維持されていることを再確認した。加えて、Soxl1の強制発現がヒトグリオーマ幹細胞株でのPlagl1の発現抑制と細胞増殖抑制に働く事も再確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究成果から(1)未解析因子Plagl1の新規機能を見いだしている、(2)腫瘍形成能を保持した複数のヒトグリオーマ幹細胞株の樹立に成功し、Soxl1とPlagl1の発現確認した。特に腫瘍形成能を保持したDiffuseastrocytomaとanaplastic oligodendroglioma株の樹立は世界初であり、今後のグリオーマ研究にその利用価値は非常に高い。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られた研究成果を基盤として、以下の研究脅推進していく予定である。 1、Plagl1標的遺伝子、結合因子の同定とその解析 2、DNA修復におけるPlagl1の機能解析。 3、Plagl1の生理的な機能を解析するために、コンディショナルノックアウトマウスの作製。 4、Plagl1機能を阻害する低分子薬のスクリーニング
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