研究概要 |
今年度は実験動物モデルの作成を中心に実験を行った。当初の計画ではin vivoの腫瘍モデルとしてPDGF遺伝子とGFP遺伝子を組み込んだレトロウイルス(pQ-PDGF-IRES-GFP)を作成し、これをSDラットの脳内に移植することで、非常に高率に悪性神経膠腫を形成するラット腫瘍モデルを確立することを目指した。しかしこのモデルでは形成された腫瘍細胞のgeneticなcharacterizationが困難なことから計画を変更し、当科で確立したグリオーマ幹細胞様細胞を定位的にヌードマウスの前頭部に定位的に注入することによりマウスの腫瘍モデルの作成を行った。当科ではこれまで4例のグリオーマ幹細胞様細胞の樹立に成功し、特にKNS1295細胞はこれまでの遺伝子発現解析で通常培養条件下で培養されたT98G,U251,U87,LN229,KNS42,KNS81等と違い、mesenchymal markerの発現が弱く、proneural markerの発現が強く認められ有用な腫瘍モデルと考えられる。このKINS1295をマウスに投与したところ約2ヶ月で複数のマウスに腫瘍形成が認められた。COX-2の発現についてはKNS1295ではほとんど発現を認めていないが、in vitroの実験で選択的COX-2阻害薬であるCelecoxib単独ではKNS1295細胞にアポトーシスの検出は認められなかったが、TMZと併用することでアポトーシスが検出され、COX-2の発現が検出できなくてもTMZと併用することでCelecoxibの腫瘍増殖抑制効果が期待できることを示す結果であった。通常のグリオーマ培養細胞ではU87でCOX-2の高発現が認められ、LN229で中等度の発現が認められたがT98G,U251,IKNS42,KNS81ではほとんど発現は検出できなかった。現在これらの結果を基にCOX-2の発現量の相違によりCelecoxibの腫瘍抑制効果があるかを検討中であり、またDNA修復阻害薬との併用効果についても実験を行っている。
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