研究課題
神経線維腫症NFは、主に多発性神経線維腫を始め多彩な病態を示すNF1と、加えて中枢神経系多発性良性腫瘍を特徴とするNF2からなる難治性の遺伝性疾患である。本年度はNF1に焦点をあてた。NF1の原因遺伝子産物NeurofibrominはRas-GAP相同領域を有し、その機能の欠損によるRasを介した細胞内シグナル伝達異常は、神経系細胞の増殖と分化異常を誘発し、NF1の病態に関わると考えられている。RNA干渉法を用いたNF1発現抑制によって、神経系細胞内にて生じた表現形の細胞内責任シグナル分子群を、融合プロテオミクスを用いて詳細に検討し、特異的に発現が変動する38種の蛋白質を同定した。その中で、特にmTOR経路の調節因子であるTranslationally controlled tumor protein(TCTP)分子ネットワークに注目し、NF1患者腫瘍より分離した初代培養細胞とNF1欠損によって生じたMPNST細胞、および正常シュワン細胞と繊維芽細胞を用いて、その機能の詳細を解析した。その結果、NF1欠損細胞ではTCTPの発現が有意に上昇し、特に、MPNST細胞においてその発現が顕著であることから、TCTPがNF病態において悪性化の指標となる可能性を示唆した。また、TCTPの発現抑制によって、腫瘍性の未分化細胞が正常な分化状態に誘導され、同時に細胞増殖が抑制されることを明らかにした。NF1病態においてmTOR経路が活性化する詳細な機構は不明であるが、今回、NF1患者腫瘍細胞PT cellでは、ERKの活性化とTCTP発現が相関することから、TCTPの発現上昇はNF1の病態におけるmTOR経路の活性化に関与していることが示唆された。ラバマイシンなどのmTOR阻害剤が、NF1の治療薬として検討されており、TCTPの機能やシグナルの上流および下流の分子を標的とした治療法の確立が期待できる。
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