研究課題
神経線維腫症NFは、主に多発性神経線維腫を始め多彩な病態を示すNF1と、加えて中枢神経系多発性良性腫瘍を特徴とするNF2からなる難治性の遺伝性疾患である。NF1の原因遺伝子産物NeurofibrominはRas-GAP相同領域を有し、その機能の欠損によるRasを介した細胞内シグナル伝達異常は、神経系細胞の増殖と分化異常を誘発し、NF1の病態に関わると考えられている。Neurofibrominの神経系細胞内機能とその欠損による細胞増殖分化異常の機構を明らかにするため、RNA干渉(siRNA)法を用いたNF1発現抑制によって、神経系細胞に及ぼすNGFによる分化誘導への影響を解析し、生じた表現形の細胞内責任シグナル分子群を、独自に開発したiPEACH(データ統合マニング法)を用いた融合プロテオミクスによって詳細に検討した。siRNAによりNF1発現を抑制したPC12細胞は神経突起伸長が阻害され、また、シュワン細胞は細胞増殖亢進と細胞形態拡大化、細胞骨格系の制御異常、運動能の亢進が観察された。NF1発現抑制細胞およびコントロール細胞より蛋白質およびmRNAを抽出し、iTRAQ、DNA array、2D-DIGEを組み合わせた融合プロテオミクスにより、生じた表現形の細胞内責任シグナル分子群の同定を試みた。NF1発現抑制により、NGF刺激PC12内で特異的に発現が変動する100種の蛋白質を確認し、これら発現変動分子を中心としたネットワーク解析により、細胞膜におけるカルシウムポンプ、カドヘリン、インテグリンやそれらの制御因子、およびTCTP、14-3-3、galectin3、dynein-GR-Cox1シグナルに関わる分子ネットワークが、NF1ノックダウン細胞内で変動していることが明らかとなった。これらの分子ネットワークの異常活性化阻害剤が、NF1に関わる病態を改善する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
NF1の解析を主に推進し、NF1遺伝子のSiRNAによるノックダウン細胞における病態に関連した細胞機能変化に連動するシグナル分子群の検索・同定、およびNF1蛋白質と相互作用する細胞内分子群の同定と、これらの活性制御機構解析に関しては、当初の計画以上に推進している。
融合プロテオミクス方法論と解析ソフトウエアを、NF解析に最適化したものとしてより詳細に開発する。また、現在までに同定された分子群に加えて、新たな分子群を追加し、これらの臨床応用が可能であるかどうかの,詳細な細胞生物学的検証と、動物検証実験を押し進める予定である。
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