研究概要 |
難治性脳神経疾患に対する細胞遺伝子治療の臨床的効果を高めるため、病巣において持続的に治療蛋白質を作用させる実用的な蛋白質補充システムの開発が急務である。独自の技術や知財を応用し、アデノ随伴ウイルス(AAV)やその産生細胞を用いた、安全で持続的な蛋白質補充療法の有効性を証明した。さらなる改良と本格的実用化に向けた基盤技術として、高純度ベクター作製システムおよび発現増強法の開発を前年度に引き続き推進した。 (1)高純度AAVベクター作製システムの開発と蛋白質補充療法:前年度に引き続き、ベクター作製系の技術基盤をさらに改良し、より効率の高いベクター調製系の開発を推進した。ベクターの産生効率を高めるための培地組成を検討し、高産生培地としての応用可能性を検討した。また、側頭葉てんかんモデルELマウスでの発作焦点内Glutamate decarboxylase発現療法の有効性と安全性について、前年度までに得られた結果を整理検証した。さらにベクターの安全性や分布様式を霊長類にて検証するため、マーモセットにおける1,8,9型AAVの遺伝子導入様式について検討を行った。 (2)ベクター搭載遺伝子の発現増強システム: 前年度に引き続き、天然成分によるAAV粒子取り込み増強効果と作用条件を解析した。神経上皮由来細胞株U251MGの他、線維芽細胞、肝細胞や筋細胞においても発現増強作用が確認された。またウイルスの血清型についても検証を行い、2型AAVおよび9型AAVにおける効果が確認できた。アデノウイルスベクターの場合にも発現増強作用が確認された。さらに遺伝子を増幅するベクター産生型腫瘍標的細胞の知財審査に関して文献調査を追加し、意見書および補正書の提出により特許が認められた。
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