マウス脊髄損傷モデルを用いて定量的な圧挫損傷(30-90kdyn)を作成後、経時的に尾静脈から採血し、予後予測バイオマーカーとなりうるタンパク質の同定を目指し研究を行なっている。採血した血清中のアルブミンおよびトランスフェリンをアフィにティからムを用いて除去することにより分析のダイナミックレンジは拡大し、100種類以上の候補因子を同定したものの、数回のMudPIT実験を通して再現性を確認したところ、主としてケラチン混入による測定誤差が大きく、腸骨リンパ節変法を用いたモノクローナル抗体作成を行なうための決定的な因子同定には至っていない。特に最も精度の高いバイオマーカーでは、発現ピーク値が損傷強度に比例し、さらに発現持続時間も損傷強度に比例する因子でなければならないと考えているが、現在までの解析ではこの両者を満たす因子は同定されていない。一方、同時に行なっているタンパク質発現の裏付けとしての損傷脊髄組織を用いた発現遺伝子解析は順調に進捗しており、損傷前、脊髄損傷後1日、4日、7日の次世代シークエンサーによる発現遺伝子プロファイリングは今年度に終了した。その結果、FPKMが5以上の強発現している遺伝子数は正常脊髄中で8000弱同定され、正常脊髄中のみに発現している遺伝子が343個、損傷後1日で174個、損傷後4日で153個、損傷後7日で209個同定した。これらの発現遺伝子プロファイルとMudPITの整合性がより正確なバイオマーカー同定へ有用であると推測している。
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