荷重の増減による間葉系幹細胞の分化調節機構を解明し、その制御法を開発することを目的に研究を行っている。平成22年度は、マウス脛骨骨髄における間葉系幹細胞から骨芽細胞と脂肪細胞と血管内皮細胞への分化に及ぼす荷重の影響について組織学的所見と分化に関連する遺伝子発現から明らかにした。具体的には、荷重の増加モデルとして、最高部に給水瓶を設置した高さ1メートルの金網製ケージ内で飼育したマウスを用いた。マウスは水を飲むために自発的にケージの昇降を繰り返す。脛骨を採取し、HE染色およびTRACP染色を行った。その結果、荷重の増加により2週後に破骨細胞面(骨吸収)が低下し、4週後に骨形成率が増加することが明らかとなった。2週後に海綿骨量と骨梁数が増加し、脂肪組織量と脂肪細胞数が減少した。運動後7日の海綿骨では皮質骨内面での骨芽細胞からオステオカルシンmRNAの発現が増加し、運動後7日の皮質骨ではwnt-1、frizzled4、β-catenin mRNAの発現が増加した。骨髄細胞において、運動後4日に脂肪細胞早期分化遺伝子であるC/EBPβとC/EBPδ mRNAの発現が低下し、運動後7日に脂肪細胞特異的遺伝子であるaP2とPEPCK mRNAの発現が低下した。骨髄細胞において、血管内皮細胞関連遺伝子であるCD31(PECAM-1)とその受容体であるCD38は増加した。荷重負荷モデルマウスの研究結果から、骨・脂肪・血管それぞれの分化マーカーについて発現の時期と局在を明らかにした。今後は、これらの相互作用と共通する制御機構を明らかにしていく予定である。
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