研究課題/領域番号 |
22390295
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
酒井 昭典 産業医科大学, 医学部, 准教授 (90248576)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 荷重 / 骨芽細胞 / 脂肪細胞 / 骨髄細胞 / 副甲状腺ホルモン / PTH/PTHrP受容体 / CFU-f / オイルレッドO |
研究概要 |
荷重増減下での間葉系幹細胞から骨・血管・脂肪への分化調節機構の解明とその制御法を開発することを目的に研究を行っている。平成24年度は、マウス四肢に荷重負荷を加え、その脛骨骨髄における間葉系幹細胞から骨芽細胞、脂肪細胞への分化の変化について組織学的所見と分化に関連する遺伝子発現から明らかにした。具体的には、荷重の増加モデルとして、最高部に給水瓶を設置した高さ1メートルの金網製ケージ内で飼育したマウスを用いた。マウスは水を飲むために自発的にケージの昇降を繰り返す。その結果、荷重の増加により2週後に海綿骨量と骨梁数が増加し、脂肪組織量と脂肪細胞数が減少した。荷重後の海綿骨では皮質骨内面での前骨芽細胞からPTH/PTHrP受容体(PTHR1)とオステオカルシンのタンパク発現が増加し、皮質骨ではwnt-1、frizzled 4、β-catenin mRNAの発現が増加した。骨髄細胞において、運動後4日に脂肪細胞早期分化遺伝子であるcebp/βとcebp/δ mRNAの発現が低下し、運動後7日に脂肪細胞特異的遺伝子であるaP2とpepck mRNAの発現が低下した。4日間荷重負荷した脛骨から骨髄細胞を培養した。アルカリフォスファターゼCFU-fは、PTH(1-34)を添加するとその形成が増加し、抗PTHR1抗体を添加するとその形成が低下した。それとは逆に、オイルレッドO陽性細胞は、PTH(1-34)を添加するとその形成が低下し、PTHR1抗体を添加するとその形成が増加した。荷重を負荷するとPTHR1 mRNAの発現は増加し、尾部懸垂により非荷重にするとその発現は低下した。これらの結果から、荷重増加により、PTH/PTHrP受容体を介したシグナルが、骨髄細胞中の骨芽細胞分化を促進し、脂肪細胞分化を抑制することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
荷重の増減による間葉系幹細胞の分化調節機構を解明し、その制御法を開発することを目的に研究を行っている。クライミングマウスを用いた荷重負荷の研究結果と尾部懸垂マウスを用いた非荷重と再荷重の研究結果から、骨・脂肪・血管それぞれの分化マーカーについて発現の時期と局在を明らかにし、骨形成系シグナルと血管系シグナルの関連性を明らかにした。研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
荷重の増減により、間葉系幹細胞から骨・脂肪・血管へどのように分化の振り分けが行われるかを解明する。今後も、クライミングマウスを用いた荷重負荷実験と尾部懸垂マウスを用いた非荷重実験の両方で推進していく。手法としては、骨形態計測、骨髄細胞を用いた定量的RT-PCR、フローサイトメトリー、細胞培養を用いる。骨芽細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞への分化関連タンパクと遺伝子の解析を中心に進める。また、PTH/PTHrP受容体シグナルを促進あるいは抑制する実験を計画する。Aldehyde dehydrogenase-2(Aldh2)遺伝子欠損マウスなどの遺伝子改変マウスを用いて、荷重の増減に対する反応を調べていく計画である。
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