研究課題/領域番号 |
22390299
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
垣花 学 琉球大学, 医学研究科, 准教授 (20274897)
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研究分担者 |
大城 匡勝 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (00315483)
渕上 竜也 琉球大学, 医学部附属病院, 講師 (10381211)
照屋 孝二 琉球大学, 医学研究科, 助教 (50437985)
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キーワード | 虚血性脊髄障害 / 対麻痺 / 硫化水素 / 抗炎症効果 / アポトーシス / 脊髄運動神経細胞 |
研究概要 |
【具体的内容】 マウス大動脈遮断モデルを用い硫化水素吸入療法による虚血性脊髄障害への効果を検討した。全身麻酔下に大動脈弓部を5分間遮断し脊髄虚血モデルを作成した。このモデルは虚血後24時間では歩行可能であるにもかかわらず48時間目には全てのマウスが対麻痺となる遅発性対麻痺モデルである。硫化水素吸入療法(H2S群)は、吸入チャンバー内(空気+硫化水素80ppm)で自発呼吸下に虚血後23時間目から5時間行った。非吸入群(C群)は空気下の自発呼吸とした。その結果、C群では10匹中10匹が48時間後に遅発性対麻痺を発症したが、H2S群では10匹中6匹が歩行可能であった。病理組織学的検討では、C群では虚血後48時間目に脊髄前角に空砲を伴う運動神経細胞損傷が認められたが、H2S群で歩行可能マウス脊髄では、脊髄前角の構造が保たれていた。さらに、活性型カスパーゼ3に対する免疫染色では、C群で虚血後30時間目から脊髄運動神経細胞が活性型カスパーゼ3陽性となったが、H2S群では活性型カスパーゼ3陽性細胞は有意に少なかった。 【意義および重要性】 本年度の研究結果では、脊髄虚血24時間後から80ppmの硫化水素を5時間吸入させることにより運動機能、病理組織にその予後を改善することが明らかとなった。そのメカニズムとして、活性型カスパーゼ3発現を抑制していることから、直接的あるいは間接的に虚血・再灌流後の神経細胞アポトーシスを抑制する可能性が示唆された。 本研究結果の重要性には2点ある。まず、虚血再灌流の24時間後からの硫化水素吸入療法が神経細胞保護効果を示したことである。さらに、硫化水素吸入により神経細胞アポトーシスを抑制できて点です。今後、その詳細な機序に対して分子生物学的検討を行う予定である。
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