研究概要 |
平成22年度に、4,584人の前立腺がん罹患者群と8,801人の対照群について、約50万個のゲノムワイドSNP関連解析(GWAS)を行い、新たな5つのSNPが前立腺がん発症と強い関連があることを発見した。平成23年度は、これらのサンプルに加えて、さらなる日本人(罹患者数1,524人、対照群1,961人)および米国カリフォルニアやハワイ在住の日系人(罹患者数1,033人、対照群1,042人)のサンプルを追加し、合計で7,141人の前立腺がん罹患者群と11,804人の対照群の日本人DNAサンプルについてゲノムワイドSNP関連解析を行った。その結果、日本人の前立腺がんと強く関連する新たな4つのSNPを発見し、これらのSNPがあると前立腺がんの発症リスクが1つにつき1.15~1.2倍に高まることも見いだした。4つのSNPについて詳しく調べた結果、1つは、ビタミンK依存的な酵素活性を有するGGCX(γ-カルボキシラーゼ)の発現に関与し、GGCXはビタミンK依存的に前立腺がん細胞の増殖を抑制することを証明した。また、平成22年度のゲノムワイドSNP関連解析により同定した染色体5p15領域の前立腺がん関連SNP(rs12653946)は、その周辺に位置するIRX4遺伝子の発現を調節していることを見出した。IRX4は前立腺と心臓に特異的に発現し、前立腺がんを抑制する機能を有するビタミンD受容体と相互作用しながら、前立腺がん細胞の増殖を抑制することを発見した。
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