研究課題
多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome;PCOS)では、血中の抗ミュラー管ホルモン(anti-Mullerian hormone;AMH)の高値を伴い、また、原因不明の子宮欠損であるRokitansky-Kuster-Hauser(RKH)症候群では高率にPCOSを伴うことから、PCOSの発生には器官形成期におけるAMHの暴露が原因となっている可能性が示唆される。胎生期におけるAMHの産生源はセルトリ細胞であり、また、閉経女性の顆粒膜細胞はセルトリ細胞様に変化することから、我々は、PCOSの本質的な病態は胎正期における一部の顆粒膜細胞の分化異常(セルトリ細胞化)であという仮説を立て、セルトリ細胞に特異的に発現する遺伝子がPCOSの卵巣で発現しているか否かを検討した。インフォームドコンセントならびに倫理委員会承認の下、手術で摘出されたPCOS卵巣組織、非PCOS卵巣組織における遺伝子発現の差をマイクロアレイ法で調べた。PCOSの診断は日本産科婦人科学会による新診断基準を用いて行った。セルトリ細胞に特異的なマーカーであるSox9,translation initiation factor(TIF)1,TIF2は、PCOS卵巣組織での発現は認めなかった。しかしながら、精巣組織に特異的な遺伝子で正常卵巣に比べPCOS卵巣組織に有意に高く発現している遺伝子としてINSL3、GSTA2、NEK2、ACE2、CITED1、LOC81691、ZPBPなどを同定でき、PCOSの卵巣では精巣に特異的な遺伝子の発現が増強している事が示された。なお、逆にKIF2C、MLF1IP、CCNB2、A 19 POO80220、AKAP9はPCOSでの発現が低下していた。
4: 遅れている
PCOSと非PCOS卵巣では遺伝子発現に差を認めたものの、そのいずれもが精巣に特異的に発現している遺伝子ではなかったために、動物実験への移行を考慮しているため
他のPCOS卵巣から顆粒膜細胞richな細胞を集めて再度遺伝子の発現を検討する。一方、PCOSでAMH値が高値を示すことは我々も確認しているので、今後はPCOSで見られる高AMHレベルの生理学的意味、臨床上の問題点についての検討を行う。
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