研究課題
卵巣がんの進展・転移に重要な血管新生にRho/ROCK経路が主要な役割を果たすことを明らかとしてきた(Takata K.Mo1 Cancer Ther)。この経路の卵巣がんにおける薬剤耐性化の意義を検討するため、患者の同意を得たうえで、35検体以上の臨床検体を収集した。我々は、スペインPharmaMar社よりTrabectedineの使用許可および薬剤提供を受け、卵巣明細胞腺癌に対するTrabectedineの抗腫瘍効果を検討してきた。In vitroおよびIn vivoの検討により、Trabectedineが卵巣明細胞腺癌に対して、抗癌薬であるシスプラチン、パクリタキセル、イリノテカンより強い抗腫瘍効果を示し、卵巣明細胞腺癌に対する有望な治療薬となることを示した。また、Trabectedineの持続暴露によってTrabectedine耐性卵巣明細胞腺癌細胞株を樹立し、(1)卵巣明細胞腺癌にTrabectedineを投与するとAKT-mTORシグナルが活性化すること、(2)Trabectedine投与と同時にAKT-mTORシグナルを抑制すれば、Trabectedine耐性化を回避することができることを示し、これらの研究成果を米国の癌専門誌Clin Cancer Resに報告した(Mabuchi S,Kurachi H et al.Clin Cancer Res 2011;174462-73.)。現在は、卵巣明細胞腺癌のTrabectedin耐性化へのオートファジーの関与を解明するための研究を行っている。5種類の卵巣明細胞腺癌細胞株を用いて検討を行っているが、現時点では結論は得られていない。その結論が得られた後に、引き続き、オートファジーを促進もしくは抑制することによってTrabectedin耐性化を解除できるのか?についても研究を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた、「卵巣がんの薬剤耐性化」に関して、メタボロミクス・オートファジー解析は進展していないが、昨年から計画に加えたトラベクテジンに関する解析は非常に順調に進行し、すでに米国の癌専門誌でも特に高い評価を得ているClnical Cancer Researchに論文として発表した。また、患者の臨床検体の収集も順調に進行している。
当初の目的通り、婦人科がんの治療で最も重要な課題である「卵巣がんの薬剤耐性化のメカニズムの解明と、その克服にむけての基礎的研究」に関する研究を継続する。当初、その方法論として、オートファジー解析とメタボロミクスを解析予定であったが、この点はやや変更して、現在成果を上げているトラベクテジンに関する解析をさらに進めたい。その一環の中で、オートファジー解析を遂行したい。Wntシグナルに関する解析、さらには、YY1の発現に関する意義についても解析を進める予定である。さらに、卵巣がんの問題点の一つは、早期から腹膜播種を起こすことであるので、その制御に向けたmicroRNAの同定とその機能解析、さらには、腹水中の骨髄由来細胞の同定と、その細胞が産生・分泌する液性因子の解析も進めたい。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (5件)
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