研究概要 |
1.交差性中和エピトープの特定-モノクロナール抗体による解析- HPV16 L2タンパク質の表面領域のうち、アミノ酸56~75の配列を持つ合成ペプチド(P56/75)で免疫したウサギの抗血清は、複数の高リスク型HPVを中和することが示され、ワクチンへの応用が期待される。P56/75をマウスに免疫して得たモノクローナル抗体(MAb)を解析し、中和エピトープの特定と交差性を明らかにすることを目的とした。HPV16型副キャプシド蛋白質L2の交差性中和エピトープを認識するMAbが2種得られた。MAb 13Bの16、18、31、33、51、58型キャプシドへの結合は確認できたが、35と52型キャプシドへの結合は検出できなかった。MAb24Bは全てのキャプシドとの結合は確認できた。MAb13Bは、16、18、31、33、51、58型偽ウイルス粒子(PsV)を中和したが、35と52型PsVは中和しなかった。MAb24Bは全てのPsVを中和した。抗体総量は同じでも、2つのMAbを1:1で混ぜると中和活性が増強した。16型L2のaa56/75領域には2つの交差性中和エピトープがある。これら2つのエピトープを提示出来る抗原は、幅広い型に有効なHPV感染予防ワクチンとなり得る。 2.中和抗体がCINの転帰に与える影響 軽度の前癌病変である子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)1を持つ患者217名においてHPV16,18,31,52,58に対する中和抗体を測定し、病変の消失、存続、進展との関係について調べた。PsVをCOS-1細胞に導入し、HPVの感染代用系を用いて、中和抗体を測定した。84名、35名、17名、1名が、1タイプ、2タイプ、3タイプ、4タイプに対する低レベルの抗体価を保有していた。多くは24か月後にも抗体価は不変であった。中和抗体の有無、抗体価は、CIN1の病変推移には無関係であった。
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