研究課題/領域番号 |
22390311
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉川 史隆 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40224985)
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研究分担者 |
柴田 清住 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90335026)
梶山 広明 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (00345886)
中面 哲也 国立がんセンター, 東病院臨床開発センター, 室長 (30343354)
那波 明宏 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (90242859)
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キーワード | 卵巣明細胞腺癌 / 免疫療法 / ペプチドワクチン / 臨床試験 / glypican3 |
研究概要 |
研究実施計画内の、臨床研究において、卵巣明細胞腺がんのGlypican3(GPC3)ペプチドワクチン臨床試験を施行した。現在までのところ、寛解群に対するadjuvantを目的で11例、化学療法との併用を1例、再発・進行症例4例に対して投与を行った。ペプチドワクチンを投与された卵巣明細胞腺がん患者におけるEx vivol IFNγELISPOTアッセイを用いた免疫学的モニタリングにて17症例中16症例においてワクチン投与前に比べ、ワクチン投与後でGPC3特異的CTLが末梢血中に増加していることが確認できた。TC(パクリタキセル+カルボプラチン)療法と併用された1例のみではあるが、免疫抑制作用のある化学療法併用群においてもGPC3特異的CTLが誘導された結果が確認できた。現在までの登録症例は20例とまだ少数例ではあるが、注射部局所の発赤や硬結は全例にみられたものの、投与中止基準に相当するGrade4のような重篤な非血液有害事象の発生は1例もみられなかった。2012年1月末時点で、寛解群(ワクチン投与計10回のプロトコール終了7例およびワクチン投与中6例)の平均観察期間は7.6か月とまだ短いものの、全例において再発は認められていない。進行群5例中1例で、治療開始3か月時点でPRの臨床効果(肝転移、傍大動脈および右外腸骨リンパ節転移の縮小あり、新規病変なし)を認めた。また、この症例を含み進行群5例中3例で、ワクチン投与前に比べ腫瘍マーカーの低下がみられた。また、このPR症例の末梢血単核球よりGPC3特異的CTLの樹立を行った。今後、TCRの解析を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵巣がんにおける癌幹細胞の同定に関しての検討は昨年度の研究成果にて順調に進展しており、免疫療法に関する臨床試験も本年度は計画どおり進展した。現在は癌幹細胞をターゲットとした免疫療法を展開すべく新規がん抗原の同定が課題であるが、研究準備は順調に進んでいることから全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上述のごとく今後は癌幹細胞とした新規抗原をいかにして同定するかが課題である。研究当初はCD133をターゲットにする計画を立てていたが、予備実験の結果、候補となるペプチドの同定には至っておらず、今後別の抗原を同定する必要性も考えられる。卵巣癌から分離した癌幹細胞の内因性HLA発現をshort interfering RNA(siRNA)によって完全に抑制し、日本人の中で最も頻度の高いHLA-A座であるHLA-A24のみを発現する人工抗原提示細胞aAPCを作製する。これを用いて、HLA-A24拘束性に卵巣癌幹細胞を認識するCTL linesを誘導・樹立する。特異性をIFN-γキャッチ法にて確認した後にCTLクローンの樹立を行う。複数の卵巣癌幹細胞に対して細胞傷害性を示すCTLクローンが樹立されれば、そのCTL、クローンが認識している腫瘍抗原が卵巣癌幹細胞に共通した特異的な新規抗原であるかどうかにつき、aAPCに用いた癌細胞株のmRNAからcDNAライブラリーを作製して同定を試みる。
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