研究課題/領域番号 |
22390312
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
浜谷 敏生 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60265882)
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研究分担者 |
阿久津 英憲 国立成育医療センター研究所, 生殖・細胞医療研究部, 室長 (50347225)
津村 秀樹 国立成育医療センター研究所, 実験動物管理室, 室長 (20180052)
山田 満稔 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40383864)
小川 誠司 国立成育医療センター研究所, 生殖・細胸医療研究部, 研究員 (10573371)
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キーワード | 着床前期胚 / 転写因子 / テロメア / 発現プロファイリング / 早期老化 / 産仔数 / ZGA / 新規遺伝子 |
研究概要 |
本研究では、着床前期胚発生における胚性ゲノムの活性化(ZGA)や分化全能性の獲得などに係る分子機構の解明を目指した。マウス着床前期胚における遺伝子発現プロファイルデータより着床前期ステージ特異的な発現がin silicoに予想された新規遺伝子を抽出した。 まず、Kruppel-associated Boxを持つC2H2-zinc finger新規遺伝子(以下、Kzpi)の発現解析および機能解明を目的とした。まず、全長cDNA配列の解読、RT-PCRおよび抗KZPI抗体による発現解析を行った。マウスサンプルを用いた発現解析から、Kzpiは着床前期の2細胞期から胚盤胞期の胚と未分化細胞に発現することが明らかとなり、これはin silico解析の結果と一致していた。また、α-アマニチン添加実験から、Kzpiは受精後に構築された胚性ゲノムより新たに転写される胚性遺伝子であることが明らかになった。Kzpiの全長塩基配列を決定しドメイン解析を行ったところ、Kzpiは転写制御因子であると考えられ、免疫組織化学染色においてもKZPIの核への局在がみられた。Kzpiノックアウトマウス(KO)は成獣まで発生し、生殖能も維持されていた。KOではin vitroにおける着床前期胚発生は正常であったが、KO同士を交配した場合の平均産仔数およびヘテロ接合体同士の交配からの出生数は、いずれも野生型と比較して有意に減少していた。長期継代観察からは、KOがWTと比較して低体重の傾向にあり、早老(脱毛)や早期死亡率の増加を認め、テロメア短縮マウスの表現型に酷似していた。そこで、KOの体細胞および胚盤胞におけるテロメア長を検討したところ、テロメアの短縮が認められた。Kzpiが着床前期胚発生におけるテロメア伸張に関与することが示唆された。今後はKO胚盤胞から胚性幹細胞(ES細胞)を樹立し、ES細胞におけるKzpiの機能を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
もう一つの新規遺伝子(着床前期胚に特異的には発現する遺伝子)の解析が遅れているが、次年度中にはノックアウトマウスの解析を済ませる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
着床前期初期から胚性に読み出され、初期胚でのみ特異的に発現する遺伝子について、ノックアウトマウスの解析を済ませる。ノックアウトマウス胚の着床前期および着床周辺期の発生を分子生物学的に検討するとともに、ES細胞を樹立し、ES細胞を用いて詳細な作用機序を解明する。
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