基礎研究では、一側反回神経脱神経モデル動物(メス8週齢Wister系ラット)を用いた。脱神経後即時に神経筋弁移植術を行った群と(ニモジピン非投与群)、向処置の2日前から評価を行うまでCaチャンネル拮抗剤ニモジピンを1000ppmの濃度で含む飼料で飼育した群(ニモジピン投与群)を作製した。甲状披裂筋萎縮の程度、神経筋接合部(神経線維とアセチルコリン受容体)の分布、筋内神経線維の分布等の形態学的評価および誘発筋電図を用いた甲状披裂筋の機能的評価を処置後2、4、10週後に実施した。内喉頭筋のうち、最も発声機能に関連の深い甲状披裂筋を対象とした。ニモジピン投与群は処置4週後に非投与群よりも筋全体と単一筋線維の断面積が有意に増大した。神経終末数、アセチルコリン受容体数の回復については有意な群間の差を認めなかったが、ニモジピン投与群のアセチルコリン受容体数に対する神経終末数の割合(神経筋接合部再生の指標)は非投与群よりも処置4、10週後に有意に増加した。また、処置2、4週後にニモジピン投与群は非投与群よりも有意に大きな誘発筋電位が認められた。以上から、ニモジピン投与群では早期の神経再支配が促進され、非投与群よりも筋萎縮の改善が早期にみられた。 また、長期脱神経動物を多数作製したので、平成23年度に順次、神経筋弁移植を行って、脱神経が長期にわたった場合にもCaチャンネル拮抗剤が甲状披裂筋の神経再支配を促進するかどうかを検討する。 臨床研究では、平成22年度に行った披裂軟骨内転術(以下、内転術)あるいは内転術と甲状軟骨形成術I型の併用(以下、内転術+I型)6名と内転術に神経筋弁移植を行った6名の発声機能を追跡中である。平成22年3月までに行った症例数はそれぞれ33名、37名で1年以上にわたって発声機能を追跡してきた。平成23年度も新たな症例を加えて引き続き検討する。
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