基礎研究:対照群(反回神経を切断した脱神経群)で長期経過した動物、神経筋弁移植群(脱神経32週後、48週後に神経筋弁移植術を行った動物)および神経筋弁移植+薬剤投与群モデル動物の評価を行った。評価は甲状披裂筋全体と各筋線維の萎縮程度(HE染色)、神経筋接合部、筋内神経線維と筋線維構成タンパクの発現(免疫染色)、および誘発筋電図検査によって行った。その結果、脱神経後32週を経てから神経筋弁移植術を行った動物群でも甲状披裂筋筋線維径が増大し、Nimodipine投与群で効果が有意に増強された。さらに筋構成タンパクであるミオシン重鎖が増加し神経筋弁を経て甲状披裂筋が再神経支配されたことが示唆された。 臨床研究:披裂軟骨内転術(内転術)、内転術+甲状軟骨形成術I型あるいは内転術+神経筋弁移植術を施行した患者を対象として症例の集積と発声機能の評価を継続して行った。平成24年度は内転術を2名に、内転術+神経筋弁移植術を14名に行い、術後発声機能の経過を観察した。発声機能の評価は、喉頭ストロボスコピー検査、ボイスプロファイル検査、空気力学的検査、音響分析、聴覚心理的検査、筋電図検査によって行った。その結果、発声機能評価に用いた各パラメータは術後有意に改善した。さらに術後24ヶ月では多くのパラメータが術後1ヶ月、あるいは3ヶ月時に比して有意に改善し神経筋弁移植術が有効であることが客観的に示された。
|