頭頚部臓器は呼吸、嚥下、発声、構音という生命維持に必須の機能がある。口腔、咽頭、鼻腔、喉頭、気管などが癌や炎症で侵された場合、病変切除後に患者の他の部位の組織を移植する方法があるが、複数部位、複数回の手術を要し容易ではない。本研究の目的は、頭頚部臓器切除後の機能障害の低減とQuality of Lifeの向上にある。in vitroでiPS細胞を各種細胞に分化誘導する効率的な技術を確立し、その細胞をスキャフォールドとともに動物モデルの組織欠損部に移植して効果と安全性を検証し、頭頸部領域における再生医療基盤技術を開発する。 1.iPS細胞の培養技術の確立 マウスiPS細胞の培養にはフィーダー細胞としてSNL細胞(SNL 76/7)を使用した。SNL細胞にマイトマイシンCを作用させ、増殖を止めた後回収し、ゲラチン処理したディッシュに播種し、37℃、CO_2インキュベーター内で1日培養した。凍結保存されたマウスiPS細胞を融解して回収し、puromicinを添加したiPS細胞用培地に懸濁した。SNL細胞の入ったディッシュにiPS細胞を播種し、培養し十分量の細胞を確保した。得られたiPS細胞のコロニーについて、未分化性が維持されているかをアルカリフォスファターゼ染色にて評価した。 2.iPS細胞の分化誘導技術の確立 ゼラチンコーティングしたディッシュ上に純化したiPS細胞を播種し単層培養を行った。分化誘導因子としてBMP-2やTGF-β3や分化誘導培地を用いた。これに対し、純化したiPS細胞をコラーゲンゲルに包埋し、スキャフォールドとしてI型コラーゲン溶液を凍結乾燥させたスポンジを作製し、コラーゲンゲルに浸透させて三次元培養したところ、軟骨様組織を得た。得られた組織を免疫組織学的手法及びRT-PCRで評価した。その結果、免疫組織学的にも、蛋白・遺伝子レベルにおいても、軟骨の分化誘導が確認された。
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