研究課題/領域番号 |
22390319
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
細井 裕司 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80094613)
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研究分担者 |
西村 忠己 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60364072)
下倉 良太 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90455428)
添田 喜治 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (10415698)
松井 淑恵 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (10510034)
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キーワード | 超音波補聴器 / 重度難聴者 / 語音明瞭度 / 純音閾値 / 聴覚 |
研究概要 |
人間の聴覚では、超音波領域の音は気導音では聞こえない。しかし、超音波振動子を用いて骨導によりそれを聞くことができる。骨導由来の超音波聴覚は、まったく音の聞こえない最重度難聴者に音を聴かせるための有力なツールとなる可能性がある。本研究では、超音波聴覚をテーマとして、基礎的研究と臨床的研究の2つの側面から研究を推進していく。基礎的研究は、超音波聴覚のメカニズムを同定すること、臨床的研究は重度難聴者のコミュニケーション補助に有効なシステムの実用化を目的とする。 (1)超音波聴覚のメカニズムの同定 可聴音の聴覚機構の解明を行うためによく用いられる方法の一つにマスキング(ある音が別の音の介入で聞こえなくなる現象)がある。骨導超音波においてもマスキングを用いた聴覚実験を行うことで知覚メカニズムの解明に役立つと考えられる。そこで骨導超音波による可聴音のマスキング実験を聴力正常者を対象に施行した。30 kHzの骨導超音波をマスカーとして用いた場合、わずか5 dBSLの強さにも関わらず骨導著音波のピッチに近い10-14 kHzの可聴音が強くマスキングされた。この結果から、骨導超音波の末梢の知覚器官は蝸牛の基底回転に存在することが分かった。 また骨導超音波の知覚メカニズムを解明するため、聴力正常者15名及び難聴者31名に対する骨導超音波及び可聴音の閾値を測定し検討した。難聴者の三分法平均聴力レベルは58.5 dBであったが(つまり聴力正常者と比較して58.5 dB聴力が劣る)、骨導超音波の閾値の平均は、聴力正常者と比較して7.3 dBしか高くなかった。このことから、骨導超音波聴覚は超音波より生じた可聴音を聞いているのではなく、超音波自体を聴取することで起こる現象であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
超音波聴覚メカニズムの同定を行う研究の中で、末梢の超音波聴覚メカニズムは23年度に行った効率的な基礎研究により、概ね明らかになってきた。しかし我々は中枢機能も視野に入れて解明を進めており、そこまで踏み込んだ実験デザインが十分ではなかった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)超音波聴覚のメカニズムの同定の研究、(2)超音波補聴器の実用化の研究という二つの大きな目標を掲げる中で、23年度に行った基礎研究により、末梢の聴覚メカニズムは大きく解明されてきた。今後は中枢機能における超音波聴覚メカニズムの解明と、(2)超音波補聴器の実用化の研究を推進していく予定である。
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