研究課題
我々は、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration; AMD)発症を惹起する原因物質として、ドルーゼン内に蓄積しているアルツハイマー病発症の原因物質であるベータアミロイドに着目して研究を進め、早期AMDからさらに脈絡膜新生血管(CNV)を伴う晩期AMDまでの全過程を再現する動物モデルを確立するとともに、ベータアミロイド蓄積からCNV発生に至る過程で重要な因子を同定し、それを標的とした新たな分子治療を確立することを目的として研究を行った。本研究では、すでに我々がneprilysin欠損マウスで再現することに成功した早期AMDの病態に加え、ヒトAMD患者でCNVが発生する網膜脈絡膜境界面に生じる病的変化として、①Bruch膜のintegrityの破綻、②マトリックス分解酵素を強発現し、脈絡膜側からBruch膜に侵入する細胞の存在、をin vivoで同時に再現することにより、早期AMDの状態から晩期AMDへと進行させることができるか解明した。Bruch膜のintegrityを破たんさせ、網膜下に骨髄からの血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cells; EPCs)を誘導する刺激として、verteporfinを用いた光線力学療法をneprilysin欠損マウスの眼底に施行した。Fluorescein dextranを大動脈から注入し、その後Retinal flatmount作成するとともに、光顕および電顕を用いて網膜組織の観察を行った。その結果、ベータアミロイド沈着部位において、光線力学療法の照射後に空間的、時間的に一致したEPCの集積がみられるとともに、その後にCNVの発生がみられ、これは蛍光眼底造影において確認された。また、CNVの発生に先立ちHTRA-1の発現更新が網膜色素上皮レベルで認められた。今までにBruch膜に機械的な侵襲を加えずにCNVを発生させた動物モデルはなく、本研究の成果はAMDの発症メカニズム解明に多大な貢献をもたらすものである。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Ophthalmology
巻: 121 ページ: 682-692
Investigative Ophthalmology & Visual Science
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