研究課題
当該年度は、前年度に全ゲノム解析による遺伝子多型解析でStevens-Johnson症候群(SJS)/中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis;TEN)発症との相関が明らかとなったPTGER3遺伝子(prostaglandin Ereceptor 3 gene)について、その機能ならびに病態への関与を検討した。まず、PTGER3遺伝子欠損マウスを用いた機能解析を実施したところ、PTGER3遺伝子を欠損することにより眼表面炎症が増悪した。PTGER3遺伝子のタンパクであるprostaglandin E receptor 3(EP3)はマウス眼表面上皮に優位に発現しており、EP3が眼表面炎症を抑制していると考えられた。一方で、手術時に摘出されるSJS/TEN患者の眼表面組織を解析したところ、正常結膜と比較してEP3の発現が著明に減少していた。この結果は、ヒトにおいても、眼表面上皮に発現しているEP3が眼表面炎症抑制に働いており、その発現の減少がSJS/TEN患者の眼表面炎症に大きく関与していることを示唆するものである。EP3は、PGE_2の受容体であるが、我々は、2005-2007の3年間に国内で発症したSJSおよびTENのうち眼障害を伴った症例について調査し、眼障害が高度な群において、被疑薬としてPGE_2の産生を抑制する非ステロイド系解熱鎮痛薬(NSAID)の占める割合が高いことを当該年度に明らかにした。この結果は、SJS/TEN発症におけるEP3の関与を強く示唆するものである。今まで解明したSJS/TEN発症と相関する複数の遺伝子多型について、患者数ならびに健常コントロール数を増やして追加解析したところ、これまで報告した遺伝子多型の中でも特に、PTGER3,TLR3,IL-4R,HLA-A0206が強い相関を維持しており、これらは本症の発症、病態と密接に関連すると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当該年度は、SJS/TEN発症と強く相関のあるPTGER3の機能を解明することができ、疾患病態との強い関連も示唆される結果を得た。本疾患の疫学調査結果とも合致するといえる結果であり、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
今後は、今まで明らかとなったSJS/TEN発症に関わる複数の遺伝子多型の相互作用について解析して発症機序を考察するとともに、疾患発症予測ならびに早期診断に役立つ遺伝子多型アルゴリズムを開発する。
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