研究課題
遺伝子・細胞治療関連:1)移植用の細胞の調整(角膜):小児ヒト由来細胞から、六角構造でNa-K ATPaseによる能動輸送機能をもつ角膜内皮細胞を株化した。2)移植用の細胞の調整(網膜):小児ヒト虹彩細胞から、形態形成遺伝子CRX、RX、NEURODの導入によって、網膜視細胞様細胞をin vitroで作成した。この細胞は繊毛構造をもち、patch clumpによって光応答の活動電位発生がみられた。3)網膜変性症の遺伝子変異:網膜色素変性症(常染色体劣性)においてEys遺伝子の変異が高頻度であることを明らかにした。遺伝子治療が可能とされているRP65変異を、レーベル先天黒内障で1例見出した。再生医療関連1)形態形成遺伝子の疾患への関わりと機能の研究:無虹彩症におけるPax6遺伝子の変異を新たに8例見出した。この変異の機能解析として、in vitro ではreporter assayを行い、in vivoではin ovo electroporationを行った。これによって、片側アレルの遺伝子ナンセンス変異が網膜細胞の形成障害に関与していることを示した。臨床像との検討では、遺伝子変異のあるexonと表現型の間に相関は見られなかった。2)ヒト再生組織の作成(角膜):上記の能動輸送機能をもつ角膜内皮細胞のシート構造をin vitroで作成した。3)ヒト再生組織の作成(網膜):ヒト皮膚由来iPS細胞から、外部遺伝子導入を行うことなく、培養条件による自然発現によって、細胞塊から眼胞様構造を形成した。ここでは、Pax6やRxなどの眼形成遺伝子の発現が確認された。さらに、高濃度酸素の下で、不完全ながら神経網膜や色素上皮細胞に分化した。
2: おおむね順調に進展している
(理由)細胞治療関連では、移植のための細胞調整を角膜と網膜で行った。いずれも、ある程度の機能を有する細胞であることが確認されたことは重要である。遺伝子治療としては、現在のところ網膜変性で唯一治療が可能と考えられているレーベル先天黒内障のRP65変異を見出した。この変異は希少とされている。また、網膜変性症の高頻度遺伝子変異を明らかにしたことは、診断上有用である。再生医療関連では、形態形成遺伝子の疾患への関わり、機能の研究を進め、眼形態形成におけるmaster control遺伝子であるPax6の疾患における関わりを明らかにした。これら形態形成遺伝子は、発生のみならず再生医療においても、外部導入、自己発現いずれでも重要であり、今後さらに組織形成の研究を進めるにあたって有用な結果である。さらに、再生医療では、小児組織由来角膜内皮細胞のシート化、ヒト皮膚由来iPS細胞からの、外部遺伝子導入を行うことなく、培養条件による自然発現によって、細胞塊から眼胞様構造、不完全ながら神経網膜や色素上皮細胞の形成に成功したことは、大きな進展である。
遺伝子・細胞治療関連:1)網膜組織の移植:マウスや家兎で、網膜内に安全に細胞を移植する方法を確立する。硝子体手術によって網膜表面から、あるいは強膜切開によって脈絡膜経由で行う。他家あるいは異種移植の場合は、まずは免疫不全動物を用い、次いで免疫抑制を併用する。2)細胞移植:上記の動物実験で、障害された網膜に健常あるいは再生網膜細胞を移植し治療する。疾患としては、人工的に作成した網膜裂孔の閉鎖あるいは変性網膜の機能回復を目指す。再生医療関連:1)形態形成遺伝子の疾患への関わりと機能の研究:形態形成遺伝子の変異解析を続け、変異型と臨床像との関わり、In vitro assayによって、遺伝子機能と病態への関わりを検討する。2)網膜変性症の遺伝子変異の検索:網膜色素変性症、Leber先天黒内障の原因遺伝子を網羅的に解析する。ことに、遺伝子・細胞治療が可能なRP65変異だけでなく他の候補遺伝子の網羅的検索、あるいは再生医療で治療できる視細胞・色素上皮細胞の機能障害を検討する。3)ヒト再生組織の作成:小児ヒト由来細胞や幹細胞を用い、角膜内皮細胞と網膜視細胞の株化・シート化を行う。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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