研究概要 |
JPLT-2の全国統一治療プロトコールで治療され、予後が判明し、さらに腫瘍が保存されている約200例の腫瘍と、細胞株としてHepG2、JPLTで樹立した細胞株JPHB-1,2,3を用いた。 1.網羅的遺伝子変化の検索:約60例の肝芽腫腫瘍DNAを制限酵素で処理し、アダプターをつけた後に増幅後、現有のGene ChipシステムにてSNPアレイを用いて、全染色体上にある約300万個のSNPsのシグナルを検出した。同一患者の正常組織(末梢血リンパ球、正常肝組織)を対照として検討した結果、染色体1q,2q,3p,17qに高頻度に異常を認めた。 2.網羅的遺伝子発現の検索:全ゲノム型の発現解析アレイにて検索し、1.のゲノム異常のある部位で有意に発現が変動している遺伝子を抽出した結果、幾つかの遺伝子の発現が有意に変動していた。そこで、これらの遺伝子は、定量RT-PCR法と購入した細胞解析用PCR(シングルセルスライドサイクラー)で検証したところ、3つの遺伝子で有意の発現変動を認めた。 3.Wntシグナル異常、テロメラーゼとネットワーク解析:本症で高頻度に見られるβ-カテニン異常、テロメラーゼの活性部位であるTERT(telomerase reverse transcriptase)の発現、さらにこの両者と結合するBRG1の発現レベルを検討し、上記の遺伝子との間を解析ソフト(IPA:Ingenuity Pathways Analyslsなど)を用いて解析したところ、Wntシグナルの上流の変化が推定された。 4.臨床病理分類、臨床リスク分類との関連を解析したところ、TERTとさらにその上流の遺伝子が層別された。そこで、これらの遺伝子及び関連遺伝子について、肝芽腫細胞株での遺伝子発現阻害によるセルテスティングと、NOD-SCIDマウスへの腫瘍接種によるアニマルテスティングで効果判定を開始した。
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